松田丈志が語る「北島康介さんから教えられたこと」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi  是枝右恭●撮影 photo by Koreeda Ukyo

「北京五輪で一番印象に残っているのは、100m平泳ぎ・準決勝のあとの姿でした。あのとき、ノルウェーのアレクサンダー・ダーレオーエンが世界記録に0秒03まで迫る59秒16を出し、予選よりタイムを落とした康介さんは2位だった。もちろん、そこが勝負じゃないけど、2位で帰ってきて本人も、『ヤバい』と思ったのでしょう。トレーナーのマッサージを受けていたときはヘッドホンをつけて、下を向いたまま誰とも話さなかったんです。

 その瞬間は人を寄せつけない雰囲気があり、戦っている感じがすごくありました。準決勝での自分の泳ぎを考え、決勝で絶対に勝つためにはどうしたらいいのか、というのを自分自身で消化している感じがして......。そのオーラを感じたとき、最後は勝つのではないかと思いました。でも、そういう雰囲気になるのは本当に一瞬。あとはみんなと仲よく話すなど、すぐに気持ちを切り替えていました。そういう部分は、僕もけっこう学んだところです。

 僕の場合は地方の小さなクラブで育ったので、中学生くらいになると同じメニューを一緒にできる選手もいなくなったので、常に孤独と向き合って練習をしている感じでした。そういう環境で僕は泳ぎを突き詰め、アネネ五輪の代表権を獲った。だけど、それだけでは戦えなかった。そのことから学んだのが、自分が頑張るというのは基本だけど、そのうえで周囲の力も自分の力に変え、他人に頼る部分があってもいい、ということでした。それからは本当に楽になったし、楽しくなった部分でもあります。

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