「パリ五輪ではなく日本記録を狙いたい」「五輪はもう夢物語ではない」新谷仁美がコロナ禍の東京五輪で見つけたアスリートとして生きる道 (3ページ目)

  • 藤井みさ●取材・文 text by Fujii Misa
  • 柳岡創平●撮影 Yanaoka Sohei

●直すべきところがわかったから前を向ける

 ヒューストンマラソンでは2時間19分24秒でゴールした直後、悔しさをあらわにした。「日本記録更新」を目標に掲げ、強い気持ちで取り組んできたからこその感情の高まりだった。

 だが、「食事内容などを変えていき、血液検査の数値を改善すれば12秒はカバーできるな」とすぐに直すべきところがわかったため、切り替えて前を向くことができた。

 1年前に東京マラソンを走った時は、逆に走り終わって何がいけなかったのか、何がよかったのかがまったくわからなかった。

「だから『マラソンが嫌だ』という気持ちのうえにさらに嫌さを増してしまって『もうマラソンは走りません』と言ったんですが、あれはあの時点での私の正直な気持ちでした。

 今回は(2021年秋シーズンの)駅伝もしっかり走って、それによってちょっと練習などが左右された部分はありましたけど、それも含めてクリアするべきところ、改善すべきところがわかったので、私にとってはプラスだったと思います」

 これからのシーズン、まず大きな目標は9月のベルリンマラソンでのマラソン日本記録更新。「4つの日本記録」のうち、もうひとつ更新できていない5000mの記録更新も視野に入れているという。

 しかし9月から逆算して、タイミングのいいレースがあれば出場するという考えで、「もしいいレースがなければそこは来年に持ち越しかなと思います」と潔く考えている。

 レースを選ぶ基準も、勝ち負けではなくあくまで「タイムが出せるか」。その意味で日本のレースに出場する選択肢は今のところないと話す。

 新谷の走りを国内で見られないのは寂しいと思うが、との質問には「そしたら、世田谷の砧公園のあたりに来てもらえれば走ってるので、大丈夫です、いつでも見られます」とちゃめっ気も交えながら返す。

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