「パリ五輪ではなく日本記録を狙いたい」「五輪はもう夢物語ではない」新谷仁美がコロナ禍の東京五輪で見つけたアスリートとして生きる道 (4ページ目)

  • 藤井みさ●取材・文 text by Fujii Misa
  • 柳岡創平●撮影 Yanaoka Sohei

●責任を自覚して結果で返す

 日本トップレベルのランナーでありながら、「走るのは嫌い」と常々公言している新谷。

 しかし、自分の商品価値を上げるために走り続ける姿には、強いプロ意識を感じる。それを本人に伝えると「ありがとうございます」と笑顔を見せつつ、「まあでも悪い言い方で言えば、両立ができない、ひとつのことしかできないんだと思います。今は仕事優先って思ったら、一直線に仕事ばかりしてしまうので、性格的にも気難しさはあるし、人付き合いにはマイナスになったりすると思うんですよね」と冷静に自分を分析する。

「プロ意識って言ってもらえるのは幸いなんですけど、やっぱり『責任があるかないか』だと思うんです。お給料をもらっている身としては、やらなきゃいけないのが当たり前だと思うんですよね。

 なのでそこはしっかり徹底したいなと。何を返せるかと考えたら『結果』しかないと思ってやっています。それが皆さんが言うプロ意識につながっているだけで、私は単純にわがままだなって思ってます」

 そうはっきりと言ってまた笑う新谷。不器用で繊細でまっすぐな彼女が切り開く新しい道を楽しみに見ていたい。そう思わせる取材となった。

取材は3月下旬に東京で開かれたランイベント「ADIDAS TOKYO CITY RUN 2023」後に行なった取材は3月下旬に東京で開かれたランイベント「ADIDAS TOKYO CITY RUN 2023」後に行なったこの記事に関連する写真を見る【プロフィール】
新谷仁美 にいや・ひとみ 
1988年、岡山県生まれ。積水化学所属。岡山・興譲館高校時代は全国高校駅伝1区で3年連続区間賞。2007年東京マラソン初代優勝、2012年ロンドン五輪10000m9位、2012年、2013年世界選手権10000m5位などの結果を残しながらも2014年に一度引退。2018年に復帰し、2020年にハーフマラソンで1時間6分38秒、10000mで30分20秒44の日本新記録を樹立。2021年東京五輪10000mで21位。

プロフィール

  • 藤井みさ

    藤井みさ (ふじい・みさ)

    ライター・カメラマン・編集者。早稲田大学卒業後、JR東日本に入社し、駅員・車掌を経験。出版社、ベンチャー等を経験したのち、朝日新聞社「4years.」編集者として大学スポーツ全般に関わる。2022年よりフリーランス。陸上を中心としたスポーツ取材のほか、ビジネス系、カルチャー系媒体でも執筆。趣味は旅と野球観戦とPerfume。

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