女子4×100mリレーの未来は明るい。信岡沙希重コーチが語る強化と選手たちの意識の変化 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Naoki Nishimura/AFLO SPORT

 個人の走力を上げるのはもちろんだが、重要になるのはバトンタイムをいかに向上させるかだ。

「兒玉選手がバトンをもらうパスでは3秒1台が何回も出ているので、他の選手も今の速度で1台を出せると思います。おそらく代表になる選手のほとんどは、リレーをやっても自分より遅い選手からしかバトンをもらったことがないと思うので、加速しきらずに速度が低いままバトンを貰う経験が多いのだと思います。それが負の遺産になっていて、『逃げるように全力で出て』と言われても、加速ができていない。データを示しても、なかなか納得してもらえないことも多いんです」

 そこはこれから、ナショナルチームとして場数を踏み、経験を重ねていけば、ある程度は解消されていくはずだ。さらに信岡コーチは、個人の走力をあげる上で、100mだけではなく200mも積極的に走るようにと選手たちに働きかけている。

「リレーの場合は120mを走る走力が必要ですが、女子の場合は男子に比べて後半の減速率が高いので、200mも練習する必要がある。福島千里さんがずっと2種目をやっていたようにリレーも含めてすべてやることで、レベルアップできる段階だと思う。個人のレベルアップはリレーのレベルアップにつながるし、リレーのレベルアップも必ず個人のレベルアップにつながる。そういうことに取り組んでいってほしいと思います」

 かつて男子がリレーで入賞を目指していた時代に今の女子はいる。だがその頃より、やらなくてはいけないことが明確になっているだけに、到達点への距離は意外と近いはずだ。

「これを続けなくてはいけない」と信岡コーチが言うように、まずは来年の世界選手権出場へ向け、5月の世界リレー12位以内を目指す。そして、タイムランキング15位以内を目標にして強化に取り組んでいく。

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