中央大学の大物ルーキー・岡田開成は、通学・競技と新たな刺激を受け、箱根駅伝のみならずトラックで世界を目指す

  • 生島 淳●取材・文 text by Ikushima Jun

中大の「C」マークをつくる岡田開成 photo by Sportiva中大の「C」マークをつくる岡田開成 photo by Sportivaこの記事に関連する写真を見る

 今年の箱根駅伝では体調不良者が続出し不本意な成績に終わった中央大学。下級生からチームを支えてきた世代が卒業し、新たなスタートを切るなか、新入生の中心的存在として大きな期待を寄せられているのが岡田開成だ。

 名門・洛南高では、現在、各大学で活躍する先輩たちに刺激を受け成長し続け、5000m13分ランナーに。入学後は片道1時間半の通学もこなしながら、トラックと駅伝を両立しながら世界を目指していく。

【多くの先輩・ライバルに刺激を受けた高校時代】

 3月23日に行なわれた中大記録会。

 10000mでトップの本間颯(現・2年)に次いで2位に入ったのは、当時はまだ高校生の岡田開成(洛南高卒・現1年)だった。このレース、岡田にとっては期するものがあった。

「高校3年の時は体調不良で都大路(全国高校駅伝)を走れず、都道府県対抗、U20のクロカン日本選手権と良くない流れが続いていたので、大学生活をいい感じでスタートできればと思っていました。練習はしっかり積めていたので、初めての10000mということで不安はありましたが、『絶対に結果を出すぞ』という気持ちが強かったです。自分でレースを作り、なおかつ28分38秒30のタイムが出せたのはよかったですね。ただ、最後に本間さんに離され、ラストスパートに課題が残ったので、収穫の多いレースになりました」

 手ごたえはあったが、それでも初めての400mトラック25周は、やっぱり未知の領域のものだった。

「走っていて、あと何周かと考えると、気が遠くなりそうで(笑)」

 岡田は大阪府の高槻市の出身。芝谷中3年の時には、ジュニアオリンピックの3000mで2位に入っている(この時3位だったのは、中大で同級生となった三浦彰太である)。そしてコロナ禍の最中だった2021年に京都の洛南高に入学。2年先輩には溜池一太(中央大)、佐藤圭汰(駒澤大)がいた。

「佐藤さんは、見ている世界を一段階引き上げてくれる存在でした。自分だけじゃなく、周りを巻き込みながら強くなっていこうという思いが強くて、たとえば『5000mの目標は14分20秒です』と言ったとしたら、『それで満足しないで、13分台狙っていこう』と声掛けをしてくれる感じでした。駒澤に入ってからの佐藤さんの活躍を見ても、佐藤さんだからこそ、あそこまで成長できるんだろうなという思いで見ていました。自分も同じステージに立てるようになりたいです」

 先輩たちにも恵まれ、岡田は高校2年の時に大きく羽ばたく。インターハイの5000m決勝では前田和摩(報徳学園、現・東京農業大)、長嶋幸宝(西脇工・現・旭化成)らの3年生にまじり、2年生では唯一、決勝に残った(結果は12位)。

 そして暮れの都大路では留学生区間である3区を担当し、区間12位、そして年が明けた2023年の都道府県対抗駅伝ではエースが顔をそろえる1区で5位と健闘し、多くの大学から注目を集めることになる。

「2年生の時の都大路が終わったあと、先輩方が引退して、『自分たちが洛南を引っ張っていかないと』と自覚が芽生えていた時期ということもあり、都道府県ではいい走りができたと思います」

 進学先を中大に決めたのは、将来のビジョンが指導陣と一致したからだった。

「藤原(正和)監督と山本(亮)コーチがいらっしゃって、『箱根駅伝だけじゃなく、トラックでも世界を目指していこう』と話してくださいました。学年ごとにこういう形で強化を進めていき、将来はここで勝負していこうというプランが明快で、僕の思いとマッチしたのが決め手でした」

 高校時代から、岡田はトラック志向の強い選手だった。藤原監督は常々、「トラックと駅伝の両輪で強化を進めていきます」と宣言しており、思惑が一致していたといえる。駅伝への思いはむしろ晩稲(おくて)で、箱根駅伝に積極的な興味を示したのは、高校2年生の時だったという。

「もちろん、見てはいました。でも、それほど熱を入れていたわけではなく、力を入れて見たのは、2023年の箱根からです。洛南で2年先輩の溜池さんが中大の1区を走っていたこともあり、あのレースは真剣に見ましたね。それから高校駅伝への向き合い方も変わってきて、たくさんの支えてくださる方がいることが実感できて、感謝の意味も込め、だいぶ駅伝への思い入れが強くなりました。いまはトラックと駅伝、思いはトントンという感じです」

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