井上尚弥がフルトン戦の直前に「スパーやってくれない?」いとこ・浩樹が感じた恐怖 (2ページ目)

  • 篠崎貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

――試合間近のスパーに、尚弥選手はどのくらいのテンションで臨んでいたんですか?

「マックスです! テンションマックス。スパーが始まった瞬間に、『これはガチだ』と感じました。そこから6ラウンドです」

――試合の10日前くらいとなると、尚弥選手の体重も相当に落ちていたと思います。そんな中でガチのスパーとなると、浩樹選手には「万が一、ケガでもさせたら......」という思いもあったのでは?

「おそらく、僕とは10キロ近い体重差があったと思います。ケガも頭をよぎりましたが、先ほども言ったように、最終的には自分自身の安全を最優先するのに必死でした(笑)」

――仮想フルトンの浩樹選手を相手に、尚弥選手の戦いぶりは?

「僕が引くほどの攻撃で、ずっと恐怖を感じてました(笑)。こちらが"亀"になってパンチをブロックする方法もあるんですけど、フルトンはそのブロックはしないだろうと思ったので、最後までフルトンらしくディフェンスするように心がけました。打ち方もフルトンらしくしようと意識したんですが、意識しすぎて逆にうまく動けなかったです」

――フルトン戦の8ラウンドで最初のダウンを奪ったシーンでは、左ボディからの右ストレートのコンビネーションでフルトン選手を大きくグラつかせました。ああいった攻撃はスパーでも試していましたか?

「やっていましたね。試合後の会見で、『他に2つか3つある』と言っていた戦略も試していたと思います」

――ボディへのジャブについて、フルトン選手は試合後「見えなかった」と語っていました。浩樹選手はいかがでしたか?

「僕の場合は、階級がだいぶ上で耐久力も違うので、そこに関してはフルトンと少し意識が違ってくると思います。同じ階級、同じ体重であのボディへのジャブを受けるとなれば、かなりの恐怖があるでしょうね。階級が上の僕でもスパーで『怖い』と思ったわけですから、試合で尚弥の強いプレッシャーを受ける状況で、フルトンが『見えない』と言ったのも理解できます」

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