日本競泳陣の好敵手。21歳の金メダリスト、チャド・ル・クロスの野望

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

 男子200mバタフライの松田丈志が目標に掲げ続けてきた、「打倒マイケル・フェルプス」。松田は2012年のロンドン五輪でその目標達成を0秒20の僅差で逃した。そして、松田に代わってその夢をあっさり実現してしまった当時弱冠20歳の選手がいた。それが、チャド・ル・クロス(南アフリカ)だった。

photo by Getty Imagesphoto by Getty Images 2011年の世界選手権では5位。その時2位だった松田とはいいライバルであり、プライベートでは友だちでもあるというル・クロス。その時の1分55秒07という記録を、1年で1分52秒96まで伸ばしてのロンドンでの栄冠だった。

「成長の原動力になったのはフェルプス選手の存在でした。具体的には、フィジカルトレーニングはもちろんですが、自分の泳ぎの分析をしましたね。細かいことの積み重ねですが、水中でのドルフィンキックの改良が一番の上達のポイントだと思います。でも、今から比べれば、あの頃は100mでも2位になっているとはいえ、それほど完成形に近づいているわけではなかった。だから本当に、勝ててよかったと思っています」

 9歳で競技を始めた彼が大きな衝撃を受けたのは、12歳の時の04年アテネ五輪だった。

「南アフリカの400mフリーリレー優勝の快挙は、国民のひとりとしてすごく嬉しかったです。それに、当時の僕は平泳ぎの選手だったので、100m、200m平泳ぎで2冠と活躍していた北島康介選手にすごく影響を受けました。でも、もっとも感動したのは、6冠を獲得したフェルプス選手。彼はひとりですべてをやってしまう、僕の尊敬する選手です。彼のようになりたいという思いが、僕の努力の原動力になっています」

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