アン・シネ「引退する、とは一度も言葉にしたことはありませんでした」4年のブランクがありながら来季ツアーの出場権を得られたわけ (2ページ目)

  • 金明昱●取材・文 text by Kim Myung-Wook

 しかし彼女は、そうした声に反発するかのように、日本ツアーでプレーした最後の年となった2019年、プロテストに挑戦して一発合格。同年のQTファイナルでは25位に入って、2020年シーズンの出場権を獲得している。

「2020年シーズンに向けて、ショットもパットもものすごく調子がよかったし、メンタルもいい状態でした。それだけに、新型コロナウィルスの感染拡大で日本ツアーを諦めざるを得なかったのは、とても悔しかったです」

 当時、ツアー出場においては日韓両国で2週間の隔離生活を余儀なくされた。その負担は想像以上で、「それならば......」と思いきってツアーから離れた。

 それから、約4年間の歳月を休養にあてたが、「『引退する』とは一度も言葉にしたことはありませんでした。休んでいる間もゴルフは続けていました」と、ゴルフが頭から離れることはなかったという。そうして、「ゴルフをしたい、試合に出たい、という気持ちが今年の夏頃から強くなって、ようやくいいタイミングと機会が訪れたわけです」と、アン・シネは言う。

 とはいえ、今回の挑戦に向けて、実戦から長く離れていて不安を抱えていたことは、彼女自身、認めている。現に先月、主催者推薦で韓国ツアーの試合に2年4カ月ぶりに出場したが、そこで実戦感覚の乏しさを少なからず感じたそうだ。

 だが、いざふたを開けてみれば、QTファースト、ファイナルの2ステージを突破。周囲の「ろくに練習もしていないはず」という偏見をも一蹴してみせた。

 それにしても、およそ4年のブランクがあっての挑戦。それを考えれば、この結果を誰が予想していただろうか。

 実は彼女、QTファーストステージが行なわれる1カ月前から周到な準備をしていた。QTが始まる前には、ファイナルの会場となる葛城GCを訪れて「1週間ラウンドしていた」と明かす。

「(QTに挑む準備段階において)ファーストステージは突破できるという自信が多少は得られていたのもありますが、やはり難しいコースに臨むにあたっては、丹念に回っておきたいという気持ちがあったんです。その時も風がものすごく吹いていたのですが、本番でそれ(を経験したこと)が生きました」

 ちなみに、ファーストステージの会場となった埼玉県のこだまGCでも、本番の数日前から入って入念に練習ラウンドをこなしていた。

「こだまGCでの最終日も風が強くて、結局1オーバーだったのですが、3~4アンダーで回れる感覚を持っていました。そうした自信が最後まで続いていました。

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