「私、どうしたら優勝できるんでしょうか?」菅沼菜々に直撃された永久シードプロが悲願達成までの秘話を明かす (2ページ目)

  • 古屋雅章●取材・構成
  • photo by Getty Images

 学年はひとつ上ながら、菅沼が合格したプロテストの同期には、渋野日向子、原英莉花、河本結、大里桃子ら「黄金世代」がいて、同学年の稲見萌寧もいる。そうしたライバルたちが次々に結果を出す姿を見て、菅沼のなかで焦りがなかったと言えば嘘だろう。

 そんな彼女の心境を推し量った森口プロは、先述の般若心経の教えを訳した言葉を送り、周囲の状況にとらわれず、目先のことに執着しない、といったことを伝えたかったのではないか。

 それからしばらくして、NEC軽井沢72の練習日に菅沼が森口プロの前に現れたという。菅沼のお父さんに般若心経の教えの言葉を手渡してから、およそ2カ月後のことだった。

「彼女が突然、私の目の前にバーッと走ってきて、『なくしちゃんたんです』と言うんですよ。最初は何のことかわからなかったんですが、どうやらあの言葉を書いた紙片のことで、『ちゃんとこうやって挟んでいたんですけど、どこかに落としちゃったんです』と。

 いきなりのことでしたし、要領を得なかったので、『じゃあ、しょうがないわね』って、その場をやりすごすこともできたかもしれません。でも、その時の彼女はものすごく大事なものをなくした、という感じで言ってくれてきたので、『何て書いてあったっけ?』と聞くと、『広く、広くって書いてありました』というので、『ああ、わかった』と言って、また書いてあげました」

 その時のことを思い出しながら、森口プロはおかしそうに笑ってこう続けた。

「ちょっと気の回る子だったら、まずは『この前はありがとうございました。気持ちがラクになりました』と言って、それから少し置いて『(その紙を)どこかになくしちゃったんですけど、もう一度書いていただいてもいいですか』と言ってくると思うんです。

 でも彼女は、いきなり『なくしちゃった』ですからね(笑)。素直と言えば素直。ある意味、表と裏がなく、計算をして(人と)接してくる子ではないのだろうなと思いました」

 森口プロからの言葉を胸に秘め、菅沼はその翌年、2022年シーズンには大いなる飛躍を遂げた。自身出場2戦目のTポイント×ENEOSで10位タイ、続くアクサレディス in 宮崎で5位タイ、さらにヤマハレディースオープン葛城で3位タイという結果を残し、4月のフジサンケイレディスでも10位タイでフィニッシュ。序盤戦の出場7戦中、4試合でトップ10入りという好成績を残した。

 そのフジサンケイレディスの試合後、森口プロは"天然"で"癒し系"とされる菅沼とは違う姿を見たという。

「試合後にクラブハウスの近くに立っていると、菅沼さんがツカツカツカと寄ってきて、またいきなり『私、どうしたら優勝できるんでしょうか?』と、詰問するような感じで問いかけてきたんです。

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