さようなら広島ビッグアーチ 37歳の青山敏弘は1カ月前から起用を告げられ「本当に涙が出ました」 (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei

【青山は最後のビッグアーチで不死鳥のように蘇った】

 実は1カ月前から、この起用は指揮官から告げられていたという。

「もうその時は、本当に涙が出ましたね。やっぱり、期待に応えなきゃいけないっていう想いが強かったです。この1カ月で自分に何ができるか。この試合までにどれだけコンディションを高めていけるかっていうところにフォーカスしてやってきました」

 見慣れたキャプテンマークをつけた37歳のボランチは、この1カ月の準備を見事にピッチ上で表現した。球際で戦い、巧みな配球を見せ、積極的にシュートも放った。73分に交代するまで躍動感あふれるパフォーマンスを保ち、3-0の勝利に貢献している。

 それは既視感のある光景だった。2012年に初優勝を決めたセレッソ大阪戦でも、青山はこうだった。ピッチを縦横無尽に走ってチームに活力をもたらし、自らゴールを奪う活躍で優勝に導いた試合である。

「僕もそう感じていました。当時の動画を見ると、こんなに走ってたんだって思うんですけど、今日も走りながら、このままいけるわって感じになって。そうさせてもらえる雰囲気だったんですよ。

 あの時もそうだったんです。ああ、こんな雰囲気だったっていうのが試合中にフラッシュバックしましたね」

 ビッグアーチでのラストマッチには、3万人近くの大観衆が詰めかけていた。C大阪戦にはわずかに及ばなかったとはいえ、スタジアムの雰囲気は決して遜色なかった。あの初優勝の熱気が、再びビッグアーチに戻ってきたかのようだった。

「37歳になって、こんな経験をさせてもらうとはね。本当にありがたいですよ。これからまたどんな経験あるかわからないし、自分がどういう立ち位置になっているかはわからないけど、来年は新スタジアムに立つという目標を今日、新たにこの場、 この瞬間に宣言させてもらいます」

 試合前は不安もあったと語る青山だが、最後のビッグアーチで、不死鳥のように蘇った。そして新たな目標を掲げたバンディエラは、来季も戦う覚悟を示した。

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