猶本光はなでしこジャパンの先輩宮間あやの背中を追う FKも武器に「1点では終われない」

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 想い続けていたワールドカップでの猶本光(三菱重工浦和レッズレディース)の初ゴールは、これまでの努力が詰まった一発だった。

 FIFA女子ワールドカップ2戦目のコスタリカ戦で、田中美南(INAC神戸レオネッサ)にボールが入ると、「絶対にターンしてくれるから、そのスペースも空けといたし、サポートではなくその次のプレーを狙おうと思った」(猶本)と、中に入りすぎずに田中(美)から出てくるそのボールを待った。

前半25分にワールドカップ初得点を決めた猶本光前半25分にワールドカップ初得点を決めた猶本光この記事に関連する写真を見る 相手DFがスリップしたことにも助けられたが、ここからの数秒での猶本の判断力、シュートスキルが爆ぜた。ボールをキープすると、GKの位置を、その直前には逆サイドの藤野あおば(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)の位置まで確認していた。

「その余裕があったんですよね。(自分で)シュートの選択肢もあったけど、よりゴールに近い選手がいるならと思って......でも、あおばのところに1枚(マークが)ついていたから(自分でシュート)」

 こう振り返る猶本は、このゴールの前に同じ場所を目がけて一度足を振っていた。

「1本打ってみて、いけそうだなって思った」という2度目に放ったシュートは、練習を重ねて習得した無回転シュート。タイミング、コース、威力、申し分のない会心の先制弾だった。

 そしてアシストした田中(美)も猶本と同じ29歳でワールドカップに初出場。猶本が最初にブレイクしたU-20女子ワールドカップで、ともに活躍した旧知の仲だ。互いの特長はもちろん、成長過程から、プレーのクセまですべてを知り尽くしているからこそのポジショニングだった。もちろん、猶本のゴールを見届けた田中(美)は真っ先に彼女のもとに駆け寄った。2人にとってもワールドカップまでの道のりは長かった。

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