山本由伸のプロ2年目、自主トレを見た関係者が「変な投げ方を練習している」... その時、投手コーチの高山郁夫は? (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

── 実際に2回目の先発機会で、本拠地デビューとなった3月30日は5回無失点と好投を見せています。

高山 オープン戦での内容が悪かったからか、韓国での由伸はグラブをベルト付近にセットするフォームに変えていました。結果的にトップの位置、タイミングが合わずに崩れた感がありました。でも2戦目は、セットの位置を元の胸の前に戻したことでリリースが安定し、躍動感がありましたね。配球的にはカーブの比率を増やして、緩急を意識した投球をしているように見えました。これから多少時間はかかったとしても、トップのメジャーリーガーに成長してもらいたいですね。

【基本的に選手はいじらない】

── 高山さんが山本投手を初めて見たのは、プロ1年目(2017年)の秋季キャンプということですね。第一印象を教えてください。

高山 福良さん(淳一/当時監督、現GM)から「すごい球を投げるピッチャーがいる」と聞いて、見せてもらったのが由伸でした。プロ1年目から一軍で5試合に先発登板していましたし、すばらしいボールを投げていました。ただ、当然ながら体ができていなかったので、コントロールはバラバラでしたね。

── 投球フォームはいかがでしたか?

高山 当時は今のような「やり投げ」の要素は入っていなくて、トップをつくって上から下へと投げ下ろす普通の投球フォームでした。どちらかと言うと、左足を突っ張る下半身の使い方のほうが引っかかりました。左足を突っ張ることでボールのスピードを生む反面、体重移動が難しくなりますので。

── そうした問題点は山本投手に伝えたのですか?

高山 いえ、伝えていません。

── そうなんですか?

高山 私は基本的に、選手をいじりません。プロに入ってくる投手は、スカウトが「いいものがある」と評価して獲ってくるわけです。重大なケガをするリスクがある場合は別ですが、本人がSOSを発してくるまでは観察に徹します。それまではコミュニケーションをとり続け、選手から相談を受けた時に自分の考えを伝えられるように選手がどう投げているかを観察しておくんです。

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