秋広優人はなぜ高卒3年目で巨人の3番に定着できたのか 「3つのターニングポイント」を振り返る

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

 仕事柄、体の大きな人物を見慣れているはずだが、秋広優人(巨人)は次元が違う。お互いに立った状態で話そうとすれば、身長175センチの筆者は空でも見上げるような角度で首を傾けて秋広を見なければならない。身長2メートルの世界とは、いったいどんな景色が見えるのだろうか。

 これだけ大きな体なのに、秋広の身のこなしにぎこちなさはない。たとえば、インコースのボールに対してうまく腕をたたんで瞬時に反応できる。長い腕がまったく邪魔に見えない。そんな感想を口にすると、秋広は自身の腕をまじまじと見つめながらこう答えた。

「ずっとこの腕なんで......。ほかの人からも言われるんですけど、自分はとくに長いとか感じたことはないですね。腕の長さが伸びたり縮んだりしたら、変わると思うんですけど」

 生真面目そうに見えて、じつは鷹揚。秋広らしい感想だった。

 筆者が初めて秋広を見たのは二松学舎大付高2年時の秋だった。といっても、秋広がいたのは神宮球場のグラウンドではなく、スタンドだった。二松学舎大付は東京大会1回戦で早々に敗れており、レギュラーの秋広まで場内係員として駆り出されていたのだ。その時点で身長198センチの場内係員は一際目を引き、筆者は思わず「大きいね」と声をかけてしまった。

 あれからわずか4年と経たず、秋広は巨人の新星として輝き始めた。7月19日現在、規定打席には届いていないものの、打率.299、8本塁打、25打点。3番打者として39試合に先発起用されている。

 ここまでの自分をどう感じているのか。率直に聞いてみると、秋広はこう答えた。

「正直言って、ここまで試合に出続けられると思ってなかったので。最初はなんとか『初ヒットを』という思いでやっていたので、できすぎというか想像以上でしたね」

4月22日のヤクルト戦でプロ初安打を放った巨人・秋広優人4月22日のヤクルト戦でプロ初安打を放った巨人・秋広優人この記事に関連する写真を見る

【初スタメンでプロ初安打】

 秋広はなぜブレークできたのか。その要因を探るため、ターニングポイントになったと思われる3試合をピックアップしてみた。本人を前にそう告げると、秋広は「本当っすか」と身を乗り出してきた。

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