涌井秀章は新天地ロッテで再び輝きを取り戻せるか? (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

 そうした状況もあり、過去2年間の涌井は報道陣に口を閉ざしがちになった。通常、先発投手は登板前日に囲み取材を受けるのだが、涌井は早足に掛けていく。コメントが必要な記者にとって、なかなか難しい取材対象だった。筆者は前出の写真週刊誌の編集者に、「追いかけ回すから、涌井が報道陣に話さなくなったじゃないですか!」と冗談半分で苦情を言うと、「本当のスーパースターなら、グラウンドでの取材も、僕らのような取材も受けるべき。松井秀喜はそうでした」と返された。

 確かに、スーパースターはある種の二面性を備えているものだ。それを使い分けることで、自身のスター性が高まる部分もある。本来、涌井もそうした二面性を持つ投手だ。

 一面は、マウンドで見せるポーカーフェイス。その冷静さを、ふたりの名将が大いに称えている。

 2010年5月21日、中日は交流戦で西武を3対1で下し、落合博満監督(現GM)が通算500勝を飾った。試合後、報道陣に先発・チェン・ウェインの代え時について聞かれた落合監督は、話の途中で自ら相手投手について語り出した。

「でも、涌井っていいピッチャーだよな。感情を一切表情に出さないのがいい。今は感情を出す選手が多いなか、涌井は淡々と投げている」

 2009年限りで楽天の監督を退任した野村克也氏も、涌井を最大級の表現で称賛した。

「喜怒哀楽の出ないピッチャーは嫌だね。『ビビってるな』とか、読みにくいから。まさに涌井はそのタイプ。それに彼は『これは空振りを奪う』『ここでは内野ゴロを打たせる』と、1球ごとに目的、根拠を持って投げている。ああいうピッチャーを見ていると、キャッチャーとして受けてみたくなる」

 一方、マウンドで見せるポーカーフェイスとは相反し、チャーミングな側面もある。例えば2013年、夏場の試合で打たれたクローザーのデニス・サファテが翌日、坊主になって現れると、涌井は帽子をプレゼントしている。そうした愛嬌ある行動で後輩たちに慕われてきた。

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