いざCS!楽天は短期決戦に強いのか、弱いのか? (4ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke 荒川祐史● photo by Arakawa Yuji

 打者目線の田尾氏は、現役時代に何度も対戦した巨人の大エース・江川卓氏との対戦を振り返り、田中の弱点をこう見立てた。

「今シーズンの田中は、ランナーを出しながらも点を与えないのが特徴でした。そう考えると、得点圏にランナーがいない場面で長打を狙っていくことが、田中攻略のポイントになると思います。僕が江川と対戦したときは、『相手が絶好調なら、ランナーなしの場面がチャンス』と周囲から言われていました。江川、田中クラスのピッチャーが得点圏にランナーを背負ったときに力を入れて投げてきたら、打てないですよ。一発のあるバッターは、『つなぐ』のではなく、『決める』意識が必要です」

 今季の田中は走者なしの場面では力をセーブし、ピンチではギアを上げて相手打者をねじ伏せていた。そうした状況に応じたピッチングをできるから、リーグ1位の防御率1.27という驚異的な安定感を誇っているのだ。田中が打ち崩されるスキは、ほとんど見当たらない。それだけに、対戦相手は先にリードを奪うことができれば、一気に波に乗ることができる。先手必勝で勢いづくことは、短期決戦のポイントによく挙げられることだ。

 田尾氏が言う。

「僕は日本シリーズを3回経験して、優勝したのは1回でした。全部のシリーズで『流れ』があって、どちらが勝ってもおかしくなかった。短期決戦は、先に流れに乗れるかどうかの勝負です」

 楽天は短期決戦に強いのか、弱いのか――。識者の意見を聞いてみると、絶対エースを擁する楽天は、短期決戦向きのチームと言えそうだ。そして田中で先手を取ったとき、初の日本一が一気に現実味を帯びてくるだろう。

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