大谷翔平の緻密な目標に松井秀喜が驚き ドキュメンタリー映画を撮った時川徹監督が明かす制作秘話 (4ページ目)

  • 白鳥純一●取材・文text by Shiratori Junichi

【松井が「今の高校生でこれができる選手はいない」と驚き】

――作中には、高校1年生の大谷選手が目標を記した表が登場し、それを見た松井さんが驚いているシーンもありました。

「高校生の時点であれだけ緻密な目標を設定できるのもすごいですが、僕が驚かされたのは大谷選手の『気負いのなさ』です。高校生くらいの男の子なら『そんなに必死になったらカッコ悪いかも......』という気持ちが湧き上がってきても不思議じゃないのに、高校時代の大谷選手からは、そういったものを微塵も感じないんです。本人は『ただ思いつきで書いただけです』と話していましたけど、日頃から目標にじっくり向き合っていないと、絶対に書けないようなものだと思います。

 松井さんは『今の高校生でこれができる選手はいない』とコメントされていましたが、その言葉が指しているのは、大谷選手の思考の深さと、周囲を気にせずにやるべきことを実行できる素直さに対する驚きなのではないかな、と僕は解釈しています」

――撮影中、大谷選手の「聡明さ」を感じることはありましたか?

「大谷選手はとても知的で、カメラの前に座って話す言葉の端々に輝くものを感じましたが、彼はそれを他人にひけらかすことは決してありません。素晴らしい言葉の数々と、本人の自然な振る舞いのギャップが強く印象に残っています」

――大谷選手はこのオフにFA権を取得し、来季はさまざまな環境の変化がありそうです。WBCの様子を収めたシーンでは、大谷選手の「勝利に対する渇望」も描かれていますが、時川監督の大谷選手に対する思いや、今後に期待することを聞かせてください。

「『勝ちたいチームに行きたい』というのも判断材料のひとつだと思いますが、水が高いところから低いところに流れていくように、大谷選手が心から信じた場所に導かれていくことが理想的なんじゃないかなと。大谷選手がどのような決断を下すかわかりませんが、来季以降も身体に気をつけながら、自然体のままで頑張ってほしいです」

(後編:地方から規格外スターが生まれた理由「都心だとスケールダウンにつながるリスクもあった」>>)

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【プロフィール】
時川徹(ときかわ・とおる)

ロサンゼルスを拠点とする映像監督。幼少期をアメリカとインドネシアで過ごす。東京大学を卒業後、広告代理店の電通でCMプランナーとしてキャリアをスタートしたあとに独立。パリとロンドンで音楽とファッション業界のディレクターとフォトグラファーとなり、映像制作の道に入る。短編映画『NOODLE SOUP』と『A BOX』は、ボストン、サンパウロ国際映画祭、カルロヴィ・ヴァリ映画祭、レインダンス映画祭などに正式上映され、『浮世絵ヒーローズ』はHotDocsに正式出品された。伝説のロックバンドKISSとの音楽ドキュメンタリー 『KISS vs. MCZ 』はメルボルン国際ドキュメンタリー映画祭のオフィシャル・コンペティションに選出され、ニューカッスル国際映画祭ではブレイクスルー・フィルムメーカー賞を受賞した。現在はロサンゼルスを拠点とする企画制作会社RIVERTIME ENTERTAINMENT INCの代表を務める。

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