ドラフト候補の本音。滝川二の大器・坂井陽翔は「ポテンシャルだけじゃ意味がない」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & phot by Kikuchi Takahiro

 打撃力の高い坂井も、県内外の強豪校から勧誘を受けた。そんななか、坂井が選んだのは「投打二刀流」として声をかけてくれた滝川二だった。

 入学して間もなく登板のチャンスを与えられた坂井は、水を得た魚のようにマウンドに駆け上がった。

「憧れていた場所だったので、楽しくてしょうがなくて。マウンドではずっと笑ってました」

 投手育成に定評のある前監督(西詰嘉明氏)の指導を受け、坂井はみるみるうちに頭角を現していく。「技術からマウンドでの心構えまで、1から10まで教えてもらいました」と、坂井は前監督への感謝を口にする。

【報徳学園の高い壁】

 だが、坂井を待ち受けていたのは無垢な喜びだけではなかった。あまりにも強大な壁がそびえ立っていた。

「1年秋は自分が打たれて、コールド負け(2対10)でした。報徳に負けて、高校野球の厳しさを知りました」

 報徳学園。ドラフト上位候補の捕手・堀柊那(しゅうな)ら逸材を擁する、兵庫を代表する名門である。

 1年後の昨秋は兵庫大会準々決勝で報徳学園と再戦し、坂井は7回まで無失点と好投。だが、8回に4失点と崩れ、0対4でまたもや敗れた。今春の練習試合解禁日となる3月4日にも対戦し、坂井は3回を投げて4失点に終わっている。坂井にとって報徳学園は越えなければならない壁なのだ。

 私が滝川二を訪れた当日は、報徳学園が甲子園球場で健大高崎(群馬)とセンバツ初戦を戦っていた。坂井は報徳学園が7対2で快勝したことをいち早くチェックしたという。

 そして、坂井は淡々とこう述べた。

「せっかく甲子園に行ったので、ある程度いい思いをしてもらえれば。それで最後は負けてくれるのかなと。夏はウチが倒しにいきますから」

 坂井は就寝前に自宅で横になると、目を閉じて報徳学園との試合を思い浮かべる。坂井のまぶたの裏には、マウンドで雄叫びをあげる自分の姿が焼きついている。そのイメージトレーニングを坂井は毎晩やっているという。

「毎日僕が抑えて報徳に勝ってるんで。自信はあります」

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