世界陸上で3連覇を狙うもまさかの惨敗 競歩・山西利和が当初「原因がわからない...」と語っていた敗因を明かす (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Nakamura Hiroyuki

 そして3つ目は、本来、各国の競歩強国が打倒・山西に照準を絞ってきたということだ。山西は各国とのメダル争いついてこう分析している。

「直前のコンディショニングというか、どういう場所で合宿をやっているかです。2019年の世界陸上ドーハ大会では20kmと50kmで日本が金メダル獲りましたが、東京五輪の男女の20kmはイタリアが獲り、今回は男女の2種目ともにスペインが獲りました。

 そうなると、ある程度は季節と、ドーハと関東の気候、札幌とイタリアの気候、ブダペストとヨーロッパ圏内の気候。その相性がどれくらいマッチしているかという相関はあると思います。(今回に関して言えば)ヨーロッパは移動も簡単でいろいろな練習場所を探せるし、陽射しが強くても朝夕は涼しくて空気もカラッとしている。そういう環境は日本にないから、厳密に考えればそういうところもあるだろうなと思います」

 今年の日本はどこも暑く、質を上げた練習を増やすのは難しく、山西は70%ほどの準備しかできなかったという。だが、ヨーロッパ勢は山西を破るために、よりよい環境を求め、100%の準備をしてきていた。

 さらに山西は2019年ドーハ大会の優勝を当時、「たまたま序盤でうまく(前に)出られた結果で、本当の力ではない」と冷静に分析していたが、翌年に東京五輪が控えていた状況のなかで"世界王者"という肩書きも背負うことになった。

「最初は関係ないと思っていましたけど、背負っていましたね。だから東京五輪ではドーハと同じことをしようとしたんです。他の選手からの自分の見られ方は変わっているし、周囲から求められるものも変わっているのに同じことをしようとしちゃって。そのギャップに自分が対処できなかったというか、焦ってしまったんです。それを受けて『あぁ、同じことをしてちゃダメだな』と思ったし、『ちゃんと背負った上で勝てるようにしなければいけないな』と考えて。それが去年のオレゴン大会でうまくいったので、背負ったり、いろんなものと折り合いをつけながら、それでもなお勝ちにいこうとする姿勢が必要かなと思っていました」

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