ロコ・ソラーレ吉田知那美が「これって普通だとあまり使わない言葉なのか」と驚き 話題になったあのフレーズとPCCCでの激闘を語る (2ページ目)

  • 竹田聡一郎●取材・構成 text by Takeda Soichiro

 そのプラン遂行のため、大事な9エンド。苦しみ、我慢しながらですが、さっちゃん(藤澤五月)の2投で相手に1点を取らせる、ほぼ完璧に近い形を作ったのですが、相手のタビサ・ピーターソン選手による乾坤一擲のラスト1投で、2点を取られてしまいます。

 このショットは、相手チームのことながら「すごい」と言葉が漏れてしまうほど完璧なショットで、私が相手チームなら「これはできないから狙わない」と、そのショットを選択すること自体を諦めてしまいそうなところ。それを、一か八かでも狙って、しっかりと決めてくる。

 当然ながら、国を背負って参加してくるチームは粘り強いチームだらけで、「そういうレベルでやってるんだ」と、相手チームのナイスショットに刺激され、改めて闘志が湧きました。

 迎えた10エンドは、2点ダウンの後攻。最低2点を取らなければ試合終了という場面で、しっかりと2点を取ってエキストラエンドへ。

 先攻でのエキストラエンドの勝率は、基本的には2~3割程度です。そんな不利な状況で、ゆり(吉田夕梨花)が先攻で戦う準備としては最高の定石を、本当に1センチのズレもなく、完璧に決めきったのです。

 あれには、本当に救われました。チームにブーストがかかって、戦う意思と勝ちにいく覚悟のようなムードがチームに流れます。

 ゆりのセットアップに後押しされて、なんとか「決死のドロー」を決めればチャンスがある、という配置を作ることができ、テレビやネットで観戦してくれた方はご存知かと思いますが、さっちゃんがそこしかないというポイントを狙って投げ、ゆりとゆうみ(鈴木夕湖)が冷静かつ激しいスイープで運んでくれました。

 最終的には、2点のスチールを記録して決勝進出。勝った直後は苦しかった時間とか、安心した気持ちとか、チームショットでラストロックを運べた達成感とか、あとは現地のカナダのファンが大歓声で称えてくれたのも見えて、いろいろなものが一気に押し寄せてきました。チームに戦う意思を見せる2投を投げたゆりの目には、緊張の糸が切れたように涙が溢れていました。

 決勝では、チーム・ギム(韓国代表)の試合運びと攻める姿勢、そして精密なショットが本当にすばらしく、私たちは及びませんでした。現段階でこのことをしっかりと受け止めなければ、前に進めないほどの完敗でした。

 負けたことはもちろん悔しいのですが、「ここで負けたことに意味があった」とシーズンを終えて振り返ることができるかどうかは、これからの自分たちの取り組み次第です。そして、ロコ・ソラーレの強さはその、ただじゃ負けない不屈の精神だと信じています。

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