宮原知子の演技に後輩号泣 坂本花織も「一日限定の復帰はもったいない」と感嘆 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【すべてをなげうった物語】

 10月7日、ジャパンオープン。宮原はチームジャパン、女子3番手でリンクに立っている。緊張もあったはずだが、氷の上でスタートポジションを決めた時、表情はすでに物語の情感に満ちていた。

「愛と情熱と宿命をテーマに」

 そう語っていた『ロミオとジュリオット』の世界観に、彼女自らが入り込む。

 冒頭、宮原は3回転ルッツ+2回転トーループ+2回転ループを着氷している。前日練習では苦心していたが、みごとにやりきった。そして3回転ループも、前日は何度も何度もトライし、失敗のなかから成功の感覚をつかんでいた。本番では完璧なジャンプだった。

 2回転サルコウ+2回転トーループも成功させ、ステップはレベル4、ダブルアクセルを決め、スピンはレベル4、3回転ルッツも華麗に着氷した。3回転トーループ、ダブルアクセル+3回転トーループは回転不足やダウングレードがあったが、物語の流れは途切れさせなかった。

 最後はレベル4のスピン、クライマックスのコレオで命果てたように倒れる最後のポーズを決めたあと、総立ちの拍手を浴びた。

 123.22点で3選手が終った時点でトップ。例年の全日本選手権の最終グループ勢と比較しても、見劣りしないスコアだった。チームジャパンの一員として勢いを与え、優勝に貢献した。たとえ"一日限定"であっても、彼女は「すべてをなげうって」物語を完結させたのだ。

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