フィギュア超絶マニアが、羽生結弦の金メダル演技を異常に細かく分析 (3ページ目)

  • 高山 真●文 text by Takayama Makoto  photo by JMPA/Noto Sunao

 助走に続くコネクティングステップは、リンクの短辺部分を往復するほどたっぷりとっている。

 エッジを動かすことで成り立つステップに対してはピアノの短い音、エッジを動かさないからこそ成立するイーグルに対しては長めに伸びる音を合わせている。

 単に「曲のイメージ」だけではなく「音符やリズム」にまで厳密にエッジワークを合わせているわけです。これが、「この曲を選んだ必然性」や「この曲で滑る意味」を、非常にクリアに主張していると思います。

●4回転のサルコーを着氷し、そのスムーズなトレースの延長線上に、パーフェクトにフリーレッグを置いていき、アウトサイドのイーグル。そしてエッジを替えて、インサイドのイーグルへと移行する。ここまでが、4回転ジャンプのトランジションになっている。

 インサイドのイーグルにおける、背中のアーチも素晴らしい。

 チェンジエッジしていくイーグル、チェンジエッジしてからのほうがスピードが上がるようなイーグルを、4回転ジャンプの着氷後のトランジションとして入れるのは、褒め言葉として使いますが、異常なレベルです。

●バタフライからフライングキャメルスピン。着氷の瞬間の柔らかなひざのクッション。体が氷とほとんど平行になるくらいに跳んでいて、それを片足で受け止めているとは信じられないほどの、エアリー感。着氷の瞬間のフリーレッグの揺れが、格段に少なくなったのを感じます。

 また、デリケートな着氷の瞬間と、ピアノのデリケートな高音が、ピタッとはまっていることの気持ちよさ!

 加えて、回転の速度にも私は注目しました。どうしてもゆるみがちになるはずのポジションの移行時と、ドーナツスピンという難しいポジションに変更したあとも、ピアノの音のタイミングとシンクロしています。回転ごとに頭が同じ位置を通るタイミングと、バックに流れるピアノの音の同調性を確認してみてください。そのことがはっきり感じられると思います。

●バックエントランス(背中側から入っていく)のウィンドミルをトランジションにした、足替えのシットスピン。これも、ピアノの音と回転のタイミングのシンクロが見事。

 特に、足替えをして、フリーレッグを軸足の間に巻き込むようなポジションへと変化した後に、私はいつも驚きます。このポジションになってもなおスピードは落ちず、ピアノの音とシンクロをしているのですが、途中でアームの動きにさまざまなバリエーションを入れても、やはりスピードが落ちないのも特筆すべきでしょう。

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