井上尚弥はスーパーバンタム級で誰と闘うのか。「悪童」との因縁マッチ、「最大の難敵」とのドリームマッチの可能性は? (5ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

 しかし現状、井上vsフルトンの早期の挙行は難しそうだ。フルトンは次戦、1階級上げてブランドン・フィゲロア(アメリカ)とのリマッチ(第1戦は2021年11月、フルトンが僅差の判定勝ち)を、WBC世界フェザー級暫定王者決定戦として行なう予定になっている。

 その一時的な昇級の後でも、「フルトンは井上戦を望んでいる」という情報もあるが、フィゲロア戦を機に主戦場をフェザー級に移した場合、井上戦は"お蔵入り"となる。また、スーパーバンタム級に残ったとしても、所属するPBCのアル・ヘイモン氏が、アメリカではトップランク傘下となる井上との試合を認めるかに疑問が残る。

 ただ、厳しい要素を考慮した上でも、このカードには諦めきれない魅力がある。井上が過去に対戦経験のない黒人選手でもあるフルトンを、明白な形で下せばさらなる評価アップは確実。スーパーバンタム級には他に同様のステータスを持つ選手が乏しいだけに、何とか"ウルトラC"で試合の実現を模索してほしい。

【※ランク外】ジョンリエル・カシメロ(フィリピン/33歳/31勝4敗・21KO、1無効試合)

世界3階級制覇王者

 バンタム級時代、井上との統一戦が実現寸前までいった"もうひとりの問題児"。今春、度重なる試合キャンセルでWBO世界バンタム級王座を剥奪され、無冠になるとともに商品価値を失った。

 ただ、今年12月3日に韓国の仁川で行なわれた赤穂亮(横浜光)戦は、2回無効試合に終わったものの、久々に迫力あるボクシングでアピールした印象もあった。3階級で活躍してきたパワーは、スーパーバンタム級でも通用しそうだ。

 現状、井上をはじめとするトップファイターの視界には入っていないだろう。興行面でもリスクが高く、起用しづらい選手であることに変わりはない。とはいえ、ネームバリューはあるだけに、強豪相手に1、2戦を勝ち抜けば面白い存在になり得る。リングに立ちさえすれば5年以上無敗のカシメロを、完全に見限るべきではないのかもしれない。

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