ラグビー帝京大、異次元の強さの理由。早稲田大に歴史的圧勝で、常勝時代に突入か (3ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●撮影 photo by Saito Ryutaro

【優れたヒト、モノ、コト】

 帝京大はなぜ、こうも強いのか? 

 素朴な疑問。記者会見でそう質問すれば、相馬監督は「何かひとつではありません」と言い、ゆっくり話し続けた。

「たくさんのことが積み重なっているんです。岩出先生がつくったクラブの文化。そして、努力するすばらしさを知っている学生たちが、毎日毎日、厳しい練習に耐え、学生としての勉強にも励み、そういうことの繰り返しを、多くの献身的なスタッフがサポートしているのが、このチームの強さだと感じています」

 岩出先生とは、1996年から26年間も監督を務めた名将、岩出雅之顧問のことである。部員の不祥事など苦難を乗り越え、人作りに邁進し、チームを10度の大学日本一に導いた。

 では、クラブの文化とは何か。ミックスゾーンで岩出さんに聞けば、前監督は笑って短く、こう漏らした。

「心の教育じゃないですか」

 帝京大には「ヒト・モノ・コト」がそろっている。全国各地からラグビー能力の高い人材が集い、優れたコーチ、トレーナー、スタッフたちのもと、医科学面のサポートなど、大学も支援する充実した施設、環境下で日々精進する。そしてコト、ふだんの練習だ。監督の情熱、学生の努力なのだ。

 そこには学生たちの自己管理、意識の高さがある。部員140人が日々、切磋琢磨する。からだ作りでいえば、週に2日は専属トレーナーの指導のもと、アジリティ(敏しょう性)、筋力トレーニングアップを図り、食事は補食、夜食を含めれば、日に5度となる。もちろん栄養士の助言のもと、だ。

 自由と規律を尊ぶ。練習をのぞくと、時には基本プレーをゆっくり、丁寧に反復している。考える。SO高本によると、常に試合を想定し、自分のラグビーナレッジ(知識)をどう高めるか、プレッシャー下の視野をどう広げるか、を意識しているそうだ。

 後半11分のSO高本のトライは圧巻だった。自陣から左足で小さいキックを相手ディフェンスラインのうしろに蹴り、自ら捕球して、タックルをハンドオフで外し、鋭いステップを踏んで、ポスト下に飛び込んだ。SO高本が淡々とした口調で振り返る。

「ふだんから、ボールを持った時は、いろいろなところを見ようと思っているので。今日はボールを持った瞬間に(自分が)ランするスペースが結構、見えました」

 ノーサイド直前、SO高本の絶妙な左足のキックパスで11個目のトライを演出した。

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