バスケ男子日本代表トム・ホーバスHCは最初に選手たちの意識を変えたかった「みんな、代表に入っても自分がメインの気持ちがなかった」 (3ページ目)

  • 宮地陽子●取材・文 text by Miyaji Yoko
  • 加藤誠夫●撮影 photo by Kato Yoshio

──男子だと、アメリカで活動している選手が予選では合流できないという事情もあり、女子の時のように同じ代表メンバーで長い間練習するということはできなかったわけですけれど、そのへんの難しさもありましたか?

「それは思ったより簡単だった。最初は難しいと思ったけど、ウィンドウ(予選)のときに10日間~2週間ぐらい一緒に練習をやって試合、それから2カ月か3カ月ぐらい休んで、もう1回集まって。だから難しいなと思ったけど、6、7人ぐらい同じ選手が入っていたんですよ。だからウィンドウ3からウィンドウ4は、最初からやらずに(前からの)継続でやれたので、うまくなった。みんな、やりたいバスケットボールがだいたいわかってきたから。役割もわかったから、思ったより簡単になったんですよ」

──女子のときはヘッドコーチになってすぐに金メダルが目標って言いましたけど、男子に関しては、最初の頃ははっきりした目標は言ってなかったですよね? それはなぜですか?

「大事なことです。口だけはダメです。女子のときは僕が2010年からENEOS(当時はJXサンフラワーズ)に(アシスタントコーチとして)入っていたじゃないですか。だから、女子の選手たちのプレースタイルとかがわかっていたし、関係も作っていました。男子はゼロから始まったんです。だからみんなの気持ちとか、みんなのバスケ観とか私も勉強して、少しずつわかってきてから、目標を作りました」

──その目標とは?

「ワールドカップの中でアジア1位になりたいです」

──パリ五輪の出場権を取るっていうことですね。

「はい、そうです。それが僕らの目標です。2勝か3勝か、わからないけれど、とりあえず1位になりたい」

──渡邊雄太選手が、「オリンピックの出場権を取れなかったら代表をやめる覚悟でやっている」とコメントしていましたけど、それを聞いてどう思われましたか。

「彼、東京オリンピックの最後の試合で負けたときに、ベンチで泣いていたじゃないですか。僕はそれを見て『あぁ、なんかすごい(強い)気持ちがある』(と思った)。だから、それも男子のヘッドコーチになろうと思った(理由です)。あのぐらいの気持ちがあるんだったらいいかな。あのような選手のタイプに教えたいと思いました」

──ということは、渡邊選手がいなかったらヘッドコーチになっていなかったかもしれないんですね。

「そこまでではないですけれど、ただ、彼にはインパクトがありました。もしみんなが(オリンピックで)3試合負けても気にしていなかったら、(ヘッドコーチをすることは)難しいと思いました」

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