渡邊雄太、自ら「崖っぷち」を宣言。「ボロ負けしても楽しそう」だったのはなぜか (2ページ目)

  • 宮地陽子●取材・文 text by Miyaji Yoko
  • photo by AFLO

ラプターズとの契約時も...

 そんな彼にとって、まわりの選手に負けないぐらい強いモチベーションとなっていることは何なのだろうか。以前、そんな問いかけをした時、渡邊はこう言っていた。

「ありがたいことにバスケットシューズとか服とか、そういうのが常にある環境で、親も(元)バスケットボール選手でバスケットがいつでもできる環境で育ててもらったので、ネガティブなことは自分のモチベーションではないんです。でも、やっぱりバスケットが大好き。それですね。ポジティブなことが常にモチベ--ションになっているかなと思います」

 これまでの渡邉のNBA挑戦を見てきてわかったのは、彼にとっては「好き」というポジティブなモチベーションと並んで、「崖っぷち」という環境もモチベーションの源(みなもと)になっているということだ。単に安定しない立場だったり、保証されていない契約形態だけでなく、渡邊自身の気持ちの持ち方を表す言葉だ。

 たとえば1年前、渡邊のラプターズでの契約は一部が保証された契約だったが、それでも渡邊は「崖っぷち」という言葉を使っていた。

「実力がある選手であれば生き残っていけて、逆に言えば油断したり、自分より力がある選手が下にいれば、契約されていようが部分保証されていようがどんどん切られてしまう。そういう厳しい世界なんで、(21-22シーズンの契約は)部分保証はされていますけれど僕自身、立場的には崖っぷちというのは変わらないですし、そういう、常に向上心をもって上を目指してやらないと----。

 いい選手というのは世界中にたくさんいるんで、そういう選手が僕のポジションを取ろうとしてくる。そういった意味では、競争がまたできるっていうのは楽しみではありますし、また気を引き締めていかなきゃいけないなっていう気持ちもあります」

 渡邊にとっての「崖っぷち」を別な言葉で言い替えると、現状で満足しない、飽くなき向上心だ。初めてNBAに入った時には、こんなことも言っていた。

「自分のなかで定めたゴールをクリアしても、いつもそれよりもっと次、こうしたいっていう気持ちのほうが強くなるんです。なんで正直、(NBAに入っても)達成感はないですかね」

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