F1エンジニアの仕事をハース・小松礼雄に聞く クルマを「おいしく」する苦悩と醍醐味 (3ページ目)

  • 熱田 護●取材・文 text by Atsuta Mamoru

【強い相手を倒すことが醍醐味】

ーー2023年シーズンのF1は史上最多23戦が開催され忙しかったと思います。休める日はありましたか?

 ないと言えばないのですが、そう言っていてはいつまでも休めません。だから、たとえばレースがない週の金曜には強制的な代休をとることもあります。そうすれば週末は金土日と3連休になるので、その間は会社に行かず日中は子どもを学校に送ったり、一緒にゴーカートやクライミングをしたりして遊んでいます。子どもたちが寝たあとに少しだけ仕事をしています。

ーーF1エンジニアの楽しさや醍醐味は何ですか?

 僕は予選が好きですね。凝縮されたプレッシャーのなかで戦うことが楽しいですし、おもしろい。あとウェットも好き。ドライバーも雨のなかではクルマの実力差を超えて、速さを見せつけることがありますが、エンジニアも一緒です。ドライコンディションでは絶対に勝てない相手にも、ウェットでは倒せる可能性がある。

 実際、2022年のブラジルGPではケビン・マグヌッセンでチーム初のポールポジションをとることができましたし、2023年の第10戦オーストリアGPのスプリントレースではニコ・ヒュルケンベルグがレッドブルと好勝負を演じてくれました。状況を読み、戦略を駆使し、天候をうまく利用すれば、ドライでは勝負にならない強い相手も倒せる。そういうのがエンジニアの醍醐味だし、一番おもしろいところですね。


後編<キャリア20年のF1エンジニア・小松礼雄に聞く「いいドライバーの条件」過去No. 1は誰?>を読む

編集協力/川原田 剛


【プロフィール】
小松礼雄 こまつ・あやお 
1976年、東京都生まれ。高校卒業後、F1の世界を目指して渡英。ロンドンの英語学校で学んだのち、ラフバラ大学自動車工学部に進学。同大学の博士課程を経て、2003年にBARホンダでF1のエンジニアとしてのキャリアをスタート。その後、ルノーやロータスでエンジニアとして活躍し、2016年に結成されたハースF1チームにチーフレースエンジニアとして加入。2023年はエンジニアリングディレクターとしてチームの技術面の責任者を務めた。

プロフィール

  • 熱田 護

    熱田 護 (あつた・まもる)

    フォトグラファー。1963年、三重県鈴鹿市生まれ。2輪の世界GPを転戦したのち、1991年よりフリーカメラマンとしてF1の撮影を開始。取材500戦を超える日本を代表するF1カメラマンのひとり。

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