角田裕毅は10万人のファンの前で全力を出しきった! 小林可夢偉以来の日本GP入賞は来年に持ち越し (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【何のメリットもないチームメイト同士の争い】

 チームメイト同士ということを考えれば、リスクの大きすぎる幅寄せではあった。だが、角田は前戦シンガポールGPの教訓もあって、必要以上のリスクを冒すことはしなかった。

「スタート自体はよかったんですけど、彼はまったくもう、レースというより僕に負けなければいいという感じなので、あのまま行っていたらクラッシュしていた。あそこで引いたのがよかったなと思います」

角田はローソンの執拗なバトルに苦しむことに...角田はローソンの執拗なバトルに苦しむことに...この記事に関連する写真を見る 後方のニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)が早めに動いたため、チームはアンダーカットされないために角田を先にピットインさせた。結果、1回目のピットストップでは角田がローソンをアンダーカットするかたちになった。

 2回目のピットストップでは、ローソンが先にピットイン。角田は5周後にピットインして、再びふたりの順位は入れ替わった。

 5周タイヤがフレッシュな角田のほうが、当然ながらペースは速い。だが、ローソンに追いついてプレッシャーをかけていくが抜けない。

 ローソンは曲がりくねったセクター1で角田を引きつけてタイヤを滑らせてオーバーヒートさせて、セクター3で引き離してメインストレートでDRS(※)を使われても決定機を与えないギャップを巧みにコントロールしていた。角田としてもセクター1で食らいついていかなければメインストレートで決定機を作れないため、いかんともしがたい状況だった。

※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。

 チームメイト同士の争いによるペース低下とタイヤの性能低下は、チームにとって何のメリットもない。しかし、前のアルピーヌ勢とはすでに15秒以上のギャップがあり、タイヤも同じ条件であるため、逆転のチャンスはなく入賞も見えてこない。後方の周冠宇(ジョウ・グアンユー/アルファロメオ)が背後に迫ってこないかぎり、チームオーダーを出す場面ではない、という判断が下されたのはそのためだ。

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