【男子ゴルフ】国内メジャー第1弾、本命はAONの遺伝子を継ぐ松山英樹 (2ページ目)

  • 三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho
  • スエイシナオヨシ●撮影 photo by Sueishi Naoyoshi

 さらに、松山の凄さは、偉大なる「鈍感力」にある。

 日本人選手の多くは、いろいろなことを考えて、さまざまなことを気にし過ぎる。そのため、使わなくてもいいエネルギーを余計なところで消費してしまう。結果、肝心なところで力を発揮できなかったりするのだが、松山は不必要な神経を一切使わない。

 キャディーに任せるべきところは任せ、自分がやるべきことだけに集中している。かつて、青木功やジャンボ尾崎もキャディーとうまく役割分担して、キャディーの存在を有効に活用しながら、メンタル面でのガス抜きも図っていた。同様に、ラウンド中にキャディーとよく会話をしている松山は、精神的な部分でもオンとオフの使い分けがうまくできているように思う。だからこそ、目の前の一打に集中することができるし、4日間、最後まで高い集中力を保つことができるのだ。

 そのうえ、おそらく松山は自分が考える必要のないことに対して、本能的に思考を停止することができるのだろう。ゆえに、ミスしても、気持ちの切り替えが早い。周囲のことも気にしない。同組の選手がどれだけ飛ばそうが、どんなに素晴らしいアプローチを見せようが、それに惑わされることなく、自分のプレイを淡々とこなしていく。

 そして、松山には「土臭さ」がある。爽やかな香水の匂いが漂うイメージの、洗練された今どきの若者と違って、スポーツ選手らしい泥臭さがある。日本のゴルフ界に歴史を刻んだ「AON」、青木功やジャンボ尾崎、中嶋常幸が登場したときもそうだった。そこに、今後どんなすごい選手になるのかという、アスリートとしての器の大きさを感じた。

 まさに「AON」を彷彿とさせる松山。久しぶりにその成長過程を共有していきたい「未完の大器」が現れたな、と思った。「AON」を知っている者からすると、彼らが登場したとき以来の懐かしさというか、期待感を抱かずにはいられない存在だ。

 これまでの3試合では、「AON」以来の器であることを改めて証明したと思う。なおかつ、目を引いたのは、闘争心である。スマートなプレイを好む若い選手が多い中で、松山は文字通り汗水たらして、がむしゃらに戦っていた。勝負に対する意欲が、他の選手たちとは明らかに違った。そこには、青木が持ち合わせていた勝負魂があり、ジャンボのようなダイナミックさがあった。

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