カタールW杯でもメッシ、ロナウド、モドリッチが...高齢スター選手が増えたのはなぜか (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

選手全般の年齢が上がっているというデータはない

 アーセナルの監督を長年務めたアーセン・ベンゲルは、ベンゼマが年を重ねてからうまくなった理由について、「30歳までの彼は、いつも体重が2、3キロ多かった」と言った。メッシやクリスティアーノ・ロナウドも、長期間の厳しいダイエットを取り入れて体重を減らした。

 時代の移り変わりを知るには、41歳になるスウェーデンのストライカー、ズラタン・イブラヒモビッチ(彼の国もカタールには行けなかった)の下着一枚の自撮り写真と、イギリスの男の子なら誰もが集めた「パニーニ・フットボール・ステッカー」の1970年代のイングランド選手の写真を比べるといい。昔は20代後半の選手でも腹が出て、顔にはしわが多く、歯がなかったりした。第2次世界大戦直後の栄養状態が悪い時代に育ったためであり、プロになってからも平気でパブに出入りしていたせいだった。

 以上のようなことから、"中年"のアスリートが増えている理由は説明がつくようにも思える。だが、問題がひとつ。実は選手の年齢が上がっているという確実な証拠は、ほとんどないのだ。世界最高のフットボールリーグであるイングランドのプレミアリーグでは、チーム全体や点取り屋の年齢が上がっていることを示す長期に及ぶデータはないと、ある主要クラブのデータ分析担当者は語った。

 スポーツウェブサイトの「ジ・アスレティック」は昨年、プレミアリーグの各選手の出場時間を分析し、「選手のピーク年齢」を割り出した。それによれば、おおよその年齢でセンターバックとストライカーは27歳、ウィンガーが26歳、サイドバックとセントラルミッドフィールダーが25歳だという。

 確かに、チャンピオンズリーグに出場した選手の平均年齢は1992-93シーズンから2017-18シーズンにかけて高くなったが、24.9歳が26.5歳になっただけで、それほど大きな幅ではない。その一方で、アメリカの主要な男性スポーツリーグでは、チームの平均年齢がさまざまな理由から若くなっている。つまり、ベンゼマたちは例外なのだ。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る