カタールW杯でもメッシ、ロナウド、モドリッチが...高齢スター選手が増えたのはなぜか (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

サッカー以外でも目立つベテランのスター選手たち

 メッシが昨年、7度目のバロンドールを受賞したことに疑問を唱えた人たちは、ポーランドのFWロベルト・レヴァンドフスキを推していた。彼もいま34歳だ。これまでのバロンドール受賞者には、1987年よりあとに生まれた選手がいない。いま世界最高の若手選手であるノルウェーのFWアーリング・ハーランドは22歳だが、カタールに行くことさえできなかった。ノルウェーが本大会に進めなかったからだ。

"中年"のスター選手は、ほかの競技でも増えている。テニス界ではロジャー・フェデラーが41歳で今年の夏に引退するまで、長いこと君臨していた。ラファエル・ナダルは36歳、ノバク・ジョコビッチは35歳だが、今もトップで活躍している。ドミニク・ティームが1990年代生まれの男子選手としては初めて4大大会に優勝したのは、ようやく2020年のことだ。

 F1では、ルイス・ハミルトンが37歳の今年になって、やっと衰えを感じさせるようになった。同じく37歳のレブロン・ジェームズは、偉大なバスケットボール選手であり続けている。アメリカンフットボールのクォーターバック、トム・ブレイディは、45歳で最近NFLに復帰した。

 ここで、ひとつの推測が成り立ちそうだ。よりよいダイエットと医療面でのケア、それにサッカーやNFLでは危険なタックルが厳しく禁止されていることが、選手寿命を延ばす要因になっているのではないか──。

 今のフットボール選手が昔の選手たちよりも体を気遣っているのは間違いない。ジョージ・ベストはアルコール依存、ヨハン・クライフはチェーンスモーカー、そしてディエゴ・マラドーナはコカイン中毒だった。もっと最近では、元イングランド代表FWのウェイン・ルーニーが、若い頃にストレス解消のため2日間にわたって酒びたりになったことがあると告白した。

 しかし、カタールで戦う選手たちのなかには、絶対禁酒で完全菜食、自宅の地下にジムを持っているというケースもけっこう多い。選手たちは年をとるほど、自分のケアを入念にするようになった。

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