CL敗退、そして来季も...。香川真司がマンUにいる意味は? (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 その守備があっさりと破られたのが後半だった。

 スコアレスのままでは敗退が決まるマンU(※)は、「後半に入ると少しは前に行くようになった」と香川も言うように、少しずつ攻撃に出始める。57分、バレンシアのクロスからエブラが左足のシュートでネットを揺らし、待望の先制点が生まれた。

※マンUホームのファーストレグは1-1。アウェーゴールルールにより0-0ならマンUが敗退する。

 だがそのわずか2分後には同点に追いつかれた。バイエルンにとって、0-0と0-1では話が違う。ビハインドになてからの反応は、恐ろしいほど速かった。「我々はすぐに反応した」と、グアルディオラも胸を張った。

 すぐに同点に追いついたことで、いったんギアが入ったバイエルンは止まらなくなった。68分には逆転、76分にはダメ押しの3点目と、テンポよく得点を積み重ねる。一方のマンUは、守備に人数を割くことがこの日の最大の戦術だったが、その守備でも力の差をはっきりと見せつけられた。

「パフォーマンスには喜んでいる。だが、いくつかのミスが最後に響いた」と、モイーズ監督は試合を振り返った。確かに守備的な戦術が功を奏した時間帯もあるが、本気で点を取ろうとしてきたバイエルンにはチームの地力の差を見せつけられた、完敗だった。

 両チームの戦いぶりもさることながら、気になるのは香川の出来だ。これだけ引いてスペースを消す作業に注力するサッカーを展開すると、香川が存在感を発揮するのは難しい。ゴール前に入って行くシーンも少なく、55分に放ったミドルシュートも力なくGKの正面へと飛んだ。いわゆるプレミア的なカウンターサッカーの中では、香川のスキルを生かすことは難しい。そんなことをあらためて実感させられた一戦だった。

 ウェストハムやアストンビラといった相手にはそれなりの存在感を見せることができても、バイエルンやプレミアの上位陣が相手になると、とたんに非力な存在になることもあらためて明らかになった。このことについては香川自身も「より相手のレベルが上がった中で、どう戦うかが自分の課題」と語っている。このところ出場時間が増えてきてはいるが、モイーズがこのまま監督を続投するのであれば、移籍を選択するのも不自然なことではないはずだ。

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