カレン・ロバート「Jリーグに戻ろうとはまったく思わなかった」本場イギリスでのプレーにこだわったわけ (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・構成 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 ボビー・チャールトンこと、本名ロバート・チャールトンは、元イングランド代表のレジェンド。「ボビー」とはイギリスにおける「ロバート」の伝統的な愛称であり、イギリスの男の子、ロバートくんは大抵、ボビーと呼ばれることになる。

 カレンが現在も周囲の人たちから「ボビー」や「ボビさん」と呼ばれるのは、イギリス伝統の愛称からきているものだ。

 そんなルーツを持つカレンは、かつて北アイルランド代表に選ばれかけたこともあるという。

「オランダにいた25、26歳の時に、一度だけ北アイルランド代表の監督からオファーをいただきました。

 でも、そこへ一回行ってしまうと、もう日本代表にはなれなくなっちゃうということで断らせていただいたんですけど、もし行っていたらどうだったのか......。もう一回人生を始められるなら、今度は行ってみてもいいかな(笑)」

 ようやくイギリスでサッカーをするという夢を叶えたのは、現役生活の最晩年。

「息子も年長さんになって、もう時間がなかった(苦笑)。小学1年生になる前に行こうと決めて」の渡英は、家族との時間を優先するため、長男の小学校入学に合わせ、5月のシーズン終了を待たずに帰国した。

「だから僕、イギリスでは半年ちょっとやっただけで、(シーズンの)最後まではやりきらずに帰ってきたんです」

 しかも、そこはプレミアリーグを1部リーグとすれば、7部相当のリーグに所属するレザーヘッドFC。当初の夢に思い描いたものには程遠い舞台である。

 それでもカレンの気持ちは、強い充実感に満たされた。

「まず、『FAカップってスゲぇな』って思いました。みんな、モチベーションが尋常じゃないんです。組み合わせ抽選がBBCで生中継されて、それをみんなで見ながら、『お、どこと当たるぞ』みたいに盛り上がる。日本じゃなかなかできないような経験でした。

 僕らももう一個勝っていれば、3部とか、4部のクラブとやれたし、その後はストーク・シティとかとやれるチャンスもあったんですけどね。勝てそうだった相手に負けちゃって、もったいなかった(苦笑)」

 カレンがプレーしたレザーヘッドFCは、7部相当のクラブとはいえ、「2、3千人を収容できるスタジアムを持っていて、それが週末の試合になると半分以上が埋まっていた」。

「どうやったら、それを日本でも実現できるんだろうって、いつも考えています。そういうところを目指していかなきゃいけないんだっていうことも、イギリスで勉強させてもらったことのひとつです。地域で愛されることに、カテゴリーってあんまり関係ないんだなって」

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