Jリーグ優勝争いの行方。横浜F・マリノス、サンフレッチェ広島、川崎フロンターレの三つ巴や残留争いを福田正博が解説 (3ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Fujita Masato

残留争いで厳しい戦いが続く4チーム

 残留争いに目を向けると、ジュビロ磐田、ヴィッセル神戸、ガンバ大阪、アビスパ福岡が苦しいように映る。その上には湘南ベルマーレと京都サンガF.C.がいるが、この両チームは勝ち点ほどサッカーの内容は悪くない。湘南にいたっては、現状は上位陣がもっとも対戦したくないと感じるのではと思うほどチーム状態がいいだけに、ここから順位をさらに上げていくように思う。

 最下位のジュビロ磐田は、今夏に伊藤彰前監督から渋谷洋樹監督へと指揮官交代に踏みきったが、苦しいチーム状況に変わりはない。こうした現況を招いた要因は、監督の手腕だけではないように感じている。

 その理由のひとつが、この夏の補強にある。前半戦で苦しい戦いが強いられた他チームは大きく補強に動いたのに対し、磐田の補強はシント=トロイデンから松原后を獲得したのみ。守備面での脆弱さがあったとはいえ、昨季J2を攻撃力で制したチームにとって本当に必要なのはFWだったはずだ。

 なぜなら今季苦戦している要因は、昨季J2で得点王になったFWルキアンの福岡移籍による得点力不足にあるからだ。それなのに補強がDF1人では、あまりにも苦しい。

 ヴィッセル神戸は2度目の監督交代をしてから少し持ち直したかに見えたが、その効力はふたたび弱まってきたように感じる。ひとたび狂った歯車を修正するのは、やはり容易なことではないのだ。

 選手たちは、チームがうまく行っている時なら、ベンチに座ることを受け入れざるを得ないし、ピッチに立つための努力もできる。しかし、チームが不調のなかではそうしたメンタリティーにはなりにくい。しかも、神戸のように実績のある選手が揃っていると、その傾向は強くなり、なかなかチーム一丸という雰囲気にはならないのではないか。

 それだけに、監督交代の手段をもう一度使う手があってもいいかもしれない。アンドレス・イニエスタというスペシャルな存在を抱える特殊なチーム事情を理解する難しさや、戦術を落とし込む時間的な制約があるので、新監督に求められる仕事は簡単なものではないが、だからといって手をこまねいていても、現状の雰囲気が大きく変わる期待は薄い。

 考えられる手はすべて打ったほうがいい。そう思えるほど現状は厳しい。

 ガンバ大阪も8月に片野坂知宏前監督を解任し、コーチだった松田浩氏に指揮官を託した。今夏に元日本代表FWの鈴木武蔵や食野亮太郎なども補強したなかで、攻撃的なサッカーをする監督から、守備構築に定評のある監督になった。降格圏を脱するための現実路線への切り替えが、どんな結果を生むのかは興味深い。

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