レッズはなぜ首位陥落することになったのか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images Sports

「優勝のプレッシャー」というのはありふれた表現だろう。しかし勝負する集団として、心理的に極度に切迫した状態ではなかっただろうか。あえて自らを死地に追い込んでいるようにさえ見えた。

 例えば、「ガンバ大阪に勝って、必ず優勝を決める!」と戦前から息巻いていた様子は清々しく、それ自体は悪いことではない。しかし強い闘争心で挑んだとしても、終盤まで同点で際どい状況だったら思考を切り替え、「ドローで貴重な勝ち点1を拾う」というしたたかさも必要だった。2位以下との勝ち点差を考えれば、柿は熟すのを待てば落ちてくる状況だったのである。

「浦和の選手は動きが硬かった。明らかにプレッシャーを感じているのは向こうだったと思う」

 実は鳥栖の選手たちもそう印象を明かしているように、浦和のプレイは力みを感じさせた。例えば、那須大亮がたまりかねて可能性を感じさせないロングシュートを打ち込んだシーンは、その一つだろう。あるいは得点を期待されたFW李忠成が、彼の能力を考えれば決めておかしくないゴールチャンスを二度までも外している。メンタル面で入れ込みすぎたときには多大な肉体的消耗を強いられる。終盤に失点という"事故"が多くなるのは自明だった。

 一方で、浦和は後半5~15分の鳥栖の猛攻を耐え凌ぎ、PKで先制点を挙げる試合巧者ぶりも見せている。彼らは酷いプレイをしたわけでもない。

 この日、浦和で出色だったのは阿部勇樹だろう。常に鳥栖の攻撃に対して未然に蓋をし、守備から攻撃のトランジッションでも効果的なポジショニング、球出しをすることでチーム全体を動かしていた。前半はボランチの彼がディフェンスラインに入って4バックの一人としてビルドアップし、後半は彼と青木拓也が下がって、那須とともに3バックを構成して鳥栖のプレスを回避するなど戦術的にもキーマンだった。

 しかしそれでは足りなかったということだろう。

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