【Jリーグ】引退を決意していた広島・森﨑和幸を救った3人の恩人 (4ページ目)

  • 原田大輔●文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「今の気持ちは、正直『肩の荷が下りた』という言葉が適切かもしれません。自分の中では、広島で育って、ずっとサンフレッチェ広島でプレイしてきたので、チームを背負っているつもりでやってきましたから。僕はもともと言葉で引っ張るようなタイプではないから、周りの人はそんなふうに感じていないかもしれませんけどね。ともあれ、僕自身、苦しい思いをたくさんしてきたけど、サポーターにも苦しい思いをさせてきた。これまでは彼らの気持ちに応えるような、熱い思いに値するような結果を残せなかったけど、今回優勝したことで、少しはサポーターの思いに報いることができて、自分が背負っているつもりだった"重荷"も少しだけ下ろせたのかな、と思います」

 そして、もうひとつ、今回の優勝で彼が伝えたいことがあるという。

「僕は本当に周りに恵まれていた。ひとりだったらきっと苦しいときを乗り越えられなかったと思う。ただ、僕がこうしてプレイを続けていることで、(慢性疲労症候群は)乗り越えられる病気だということを、少なからず証明できたと思う。僕も苦しんでいたときは、同じように苦しんでいる人のことを調べて、どうやって乗り越えたかを知り、その姿を見て勇気づけられた。今回、Jリーグで優勝した僕の存在が少しでも、同じ病気で苦しんでいる人たちの力になればいいな、と思っています」

 和幸は今、もう「辞めたい」とは思わない。むしろ、彼の人生においても初のタイトルを獲得したことで、ふつふつと新たな欲が沸いてきている。

「ひとつ栄冠を勝ち獲って、その喜びを知ると、他の大会でも優勝したくなりますね。今度はどんな喜びを味わえるんだろうって」

 J1優勝を果たしたサンフレッチェ広島は、12月6日に開幕するFIFAクラブワールドカップに挑む。広島で生まれ、広島で育った背番号「8」は、前を向いて、次なる戦いへと走り出す。

(前編から読む>)

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