【なでしこ】東アジアカップ初戦。中島依美が感じさせた「新戦力の可能性」 (3ページ目)

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 中島は、ほかの選手のように長く佐々木監督の元でプレイしてきたわけではない。世界の上位ランクをキープできるまでに成長していったなでしこジャパンの中で切磋琢磨してきた選手でもない。そんな中島が決めたことが大きいのだ。

 なでしこの“ベテラン”たちは、新しい選手に点を取らせようとする。ピッチ上ではそんな選手たちのお膳立てが必ずある。それにただ“合わせる”だけのゴールと、反応して引き出されるゴールでは、その後の選手の成長に差が生じる。今回の中島のゴールは間違いなく後者。今大会で“大化け”する可能性が十分にある。いずれにせよ、主軸メンバーがドイツワールドカップから概(おおむ)ね変更がなさそうな今、ここ数試合は得点者が限定されていた。ようやく現れた“計算できる”FW以外の選手の得点は明るい材料だ。

 その半面、あえて厳しく記すなら、前半のうちに何かもう一工夫、新たな試みを見たかった。後半はほぼ日本が主導権を握る形になったが、もしこれが中国のように後半の早い段階で足が止まらない欧米の強豪だったら、どう攻略しただろうか。チームとして顔ぶれが変わらないのであれば、その熟成された理解力と連携を生かして意外性のある打開策を見たい。相手のリアクションで展開するのではなく、自らのアクションで流れを組みかえる動きを、ハイプレッシャーで苦しんだ前半のうちに示してほしかった。なでしこのスタイルを研究しつくした欧米諸国は90分ハイプレッシャーで襲いかかってくるのだから。

 次戦の北朝鮮戦までは中4日とコンディションを整える時間は確保されている。前回対戦したロンドンオリンピック予選ではドローに終わっているだけに、互いのモチベーションも高い。攻守に見応えのある一戦としてほしい。

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