ザックジャパンの「3-4-3」を機能させるキーマンは? (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 3-4-3の特徴として、まずはサイドに人数をかけて攻撃できる点が挙げられる。これこそが最大のメリットと言ってもいい。ところが、左右のFWに入った香川真司、乾貴士がサイドに開かず中央へ入ってくることが多かったため、左右のMFである駒野友一、内田篤人が孤立。有効なサイド攻撃は生まれなかった。

 せっかくボールがサイドに展開されても、そこからサイドを深くえぐることなく、ボールも人も中央へ。狭い局面で強引な中央突破を狙う確率の低い攻撃に終始したばかりか、カウンターを受ける危険性をも増大させた。

 また、3人のDFを後ろに残す3-4-3の場合、両サイドMF(駒野と内田)が同時に高い位置まで進出できるため、サイドチェンジを有効に使えば幅を生かした攻撃ができるのも特徴のひとつ。しかし、そうしたサイドチェンジの意識はほとんど感じることができなかった。

 香川と乾が中央に入ってくることの弊害は、攻撃面だけではない。守備においても相手サイドバックを自由にしてしまい、皮肉なことにブルガリアには厚みのあるサイド攻撃を許す結果となった。

 ただし、香川と乾が中央に入ってくるのも無理はない、という側面もあった。ボランチ(遠藤保仁、長谷部誠)の押し上げが十分でなく、センターフォワードの前田遼一とボランチとの間が大きく空いてしまっていたからだ。これでは、仮に香川や乾がサイドに開いて外から崩したとしても、肝心な場面でゴール前に人がいないという状況に陥ってしまう。

 また、ボランチのポジショニングが低かったことで、相手ボールに対する中盤でのプレスも弱まった。中盤の守備で後手を踏み、手薄なサイドに展開されてはピンチを招いた。

「守備はコンパクトに、攻撃はワイドに」とはサッカーにおけるセオリーだが、ブルガリアがこれを見事に実践していたのとは対照的に、日本がやっていたのは「守備はワイドに、攻撃はコンパクトに」。残念だが、これでは勝負にならないのも当然だった。

 しかし、これをして「3-4-3の失敗」とは言い切れない。というのも後半、使い慣れた4-2-3-1に変更した後も同じような現象――攻撃が中央に偏り、ボールを失うとサイドを使ったカウンターを受ける――が起きていたからだ。後半に入り、いくらかワンタッチでパスが回るシーンは増えたが、ゴールの可能性という点ではさしたる改善は見られなかった。

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