ヤクルト山野太一が部屋に自分のユニフォームを2枚も飾る意味 石川雅規との練習で得たものは (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Sankei Visual

 しかし結果は、2回途中7失点で降板。その後は左肩を痛め、二軍でも1試合の登板でルーキーイヤーは終了。2年目も状態が上向くことなくシーズンを終える。二軍の戸田球場で山野のピッチングを見た時、球速が遅くなっていることとストライクが入らなかったことが、強く印象に残っている。

 山野は「自分が希望した背番号21でしたが、いいことは本当に一度もなかったです」と振り返った。

「正直、自分が言うのはおかしいかもしれませんが、ここまでしてきた努力については自信を持って言えるというか。去年も寮では誰よりも早く起きて、誰よりも早くストレッチを始めて......それを毎日続けていたんですけど、思うようにいかない。それでも、とにかく続けることで、いつか急にいいことが起きるんじゃないかと頑張ったんですけど、どうしても思うようにいかない」

 そして初勝利後のヒーローインタビューでは「野球をやりたくない日々も......」と声をつまらせた。

「野球をやりたくない気持ちもありながら、地元である山口の方たちや大学時代を過ごした仙台でお世話になった方たちなど、応援してくださる方の期待を裏切りたくない。自分では思うようにいかないことばかりなのですが、そのためには(野球を)やるしかない。そこがメンタル的につらかったです」

 昨年オフ、山野は育成契約選手となり、背番号は『013』に変更された。そうした苦しみのなかで、少しずつではあるがいい方向に進み出した。

「いきなりすべてを求めないで、段階をしっかり踏んでいこう」(山野)と、まずはテイクバックの形など、投球フォームの見直しから取り組んだ。

「球速はまだ戻っていないので、いかにバッターが見づらい、ボールの出どころがわかりにくいフォームで投げるかを意識しました。いろいろな人のアドバイスのなかから、自分に合いそうなものを選んでつくり上げたのですが、結局、右足が着いた時にトップがしっかりできていることが重要だなと。そのためにテイクバックを小さくしました」

 今季、二軍で開幕を迎えると「肩の痛みと恐怖心がなくなったことで、思いきって腕が振れることも大きいですね」と、投げるたびに安定感と球速は増していった。

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