侍ジャパン・栗山英樹監督が明かす、大谷翔平WBC参戦までの舞台裏。殺し文句は「日本野球の将来のためだから」 (5ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Igarashi Kazuhiro

【大人になったダルビッシュ】

── 逆に、大谷選手がいることで、日本でプレーする選手に与える影響はどんなところに期待していますか。

栗山 それはもう、翔平がミーティングルームに「ちーっす」とか言って入ってきたら、みんな緊張するでしょう。チームがピリッとするのは間違いない。ダルだってこの夏にアメリカで食事をした時、すごく大人になっていて驚きました。いや、想像はしていましたが、僕なんかの想像をはるかに超えて、すべてがすごかった。今回、日本から選ばれる選手のほとんどは、野球をやり始めた頃に第1回、第2回のWBCを見ている世代ですよね。そういう選手が、もはや伝説となっているダルと一緒にプレーして、その凄味を間近で感じながら超えるために必死になる姿を僕も見たい。

 ダルだって「今の若い子たちからは学ぶことがたくさんあって、彼らと一緒にやることで自分がもっと進化できるかもしれないと思っているんです」と言ってくれてるんですから......ね、すごいでしょ。たとえば、いつから合流するのかなんて聞いてもいないのに、ダルのほうから「チームがひとつになるのに2月からいないのはまずいでしょう」と言ってくれる。

── ダルビッシュ投手が胴上げ投手となった2009年、山本由伸投手は10歳、村上宗隆選手は9歳、佐々木朗希投手は7歳でした。

栗山 そういう伝説の選手を間近で見た時、野球に対して命がけにならない選手はいないと思うんです。彼らにはダルのことをすごいと思って臆するんじゃなく、ガンガン、ぶつかっていってほしい。「どうなんですか」「こうなんですか」「こうやりましょうよ」って......ダルには彼らを受け止めてくれる大きさがあるから、それを若い選手に求めたい。遠慮しないでいってくれ、と。ダルも若い時はそうだったんだ、明日はダルのようになれるんだと考えてほしいと思っています。

5 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る