侍ジャパン・栗山英樹監督が明かす、大谷翔平WBC参戦までの舞台裏。殺し文句は「日本野球の将来のためだから」 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Igarashi Kazuhiro

【大谷翔平が参戦する意義】

── でも、ピッチャーでもバッターでも、大谷選手がWBCに出場するというインパクトは計り知れません。

栗山 その喜びというか、うれしさはもちろん僕にもあります。プレッシャーもあるし、出ると聞いてホッとしたのも事実ですが、日本のファンのみなさんも、日本の若い選手たちもきっと喜んでくれるんじゃないかと思っています。野球をやっている、やっていないに関わらず、この国の子どもたちに今の大谷翔平を見せてあげたかったし、翔平がジャパンのユニフォームを着てプレーすることがとてつもなく大きなメッセージになることは間違いない。僕がそのためだけにジャパンの監督になったとは思いたくないけど、でもそれは僕がしなくちゃいけない使命だということくらいは想像がつきましたからね。そういう意味での安堵感はありました。

── ただ、ファイターズの時に栗山監督はピッチャーとしての大谷選手をマウンドへ送り出すたびに壊れないだろうかと常に胃の痛い日々を過ごしていました。またそうした日々が始まりますね。

栗山 そうですね......その責任の大きさは忘れずに努めなければいけないと感じています。さらにもうひとつ、この5年間で翔平も肉体的に成長しているだろうし、そこをきちんと把握したうえで、ボールも違う、マウンドも違う、そういう環境の違いが何かを起こすリスクは常にありますから、ジャパンの監督をしている以上、預かった選手を無事にそれぞれのチームへお返しするまではホッとなんかしていられないという気持ちも、もちろんあります。

── そういう厳しい環境の大会に、大谷選手は何を求めて出場すると想像していますか。

栗山 そこは正直、わかりません。ただ......これはあくまで僕が感じていることですが、勝ちきりたい想いが強いからなのかな。アメリカの野球を知って、アメリカのいい選手が参加する......そういう選手たちと勝負して、勝ちきりたいんだろうなという想像はできますよね。今、チームで勝ちきれない悔しさ、チームを背負っているあの感じ......打って、投げて、というだけじゃない野球の原点にあるチームが勝つ喜びを感じたい。話したことはないからわからないけど、そんなふうなことじゃないのかなと思っています。

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