侍ジャパン・栗山英樹監督が明かす、大谷翔平WBC参戦までの舞台裏。殺し文句は「日本野球の将来のためだから」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Igarashi Kazuhiro

── 実際、8月に渡米して大谷選手に会ったんですよね。

栗山 ほかの選手とは食事をしながら2時間くらいは話ができたんですが、翔平とはホントに一瞬(笑)。「お疲れさまでした」みたいな感じで、そのままフッと行っちゃおうとしましたから......。

── 大谷翔平あるあるですね(笑)。

栗山 さすがにその時は翔平を引き留めてひと言、こちらの想いを伝えました。何の反応もなかったし何も答えなかったけど......それも翔平らしいんですよね。こちらが正式に何も伝えておらず、物事だけがどんどん進んでしまっている雰囲気のなか、僕は翔平という人はこちらが考えていることをさらに上回って考えられるとも思っていて、だから野球に関してはすべてお見通しだろうし、信用もしていますしね。だから僕がジャパンの監督に就任して、翔平はメジャーでプレーするなかでもトップの選手で、そこのところのけじめは、いずれはつけなくちゃいけないと思っていました。

【大谷翔平からの突然の電話】

── けじめをつけるためのひと言とは、どんな言葉だったんでしょう。

栗山 日本野球の将来のためだから、と。

── WBCで勝ちきることが?

栗山 そうですね。もちろんそれを誰よりもわかっているのは翔平で、これからの日本の野球のためにこのWBCがどういう意味を持つのか。メジャーでプレーする選手が出場することがどんな意味を持っているのか。そこを彼はわかっていると思うからこそ、そのひと言だけで十分だと思いました。

── そのひと言に大谷選手は応えてくれたということですね。

栗山 すごくビックリしたのは、翔平から僕に直接、電話がかかってきたんですよ。着信を見たら翔平だったから、最初は「うわっ、何かアクシデントがあったのか」と思いました。だから、あまりに怖くてすぐに出られなかったんです。だって僕にとっていい話だったら、翔平は直に連絡しなくてもいいじゃないですか。(通訳の水原)一平を通して、OKです、と伝えれば済む話で、わざわざ僕に電話をかけてくるとしたら、ケガとか事故とか、何かがあったんじゃないかと胸がザワッとしたわけです。

 そうしたら、最初、全然違う話をしてきたから、あれっと思っていたら、最後に「あのー」とか言って、「出ます」と......翔平のほうもきちんとけじめをつけて、自分でちゃんと言わなきゃと思ってくれたんでしょうね。もちろん僕も、きちんとお願いしたつもりだったし、その時はきちんとありがとうございますと感謝の気持ちを伝えました。

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