大谷翔平は「疲労感」と「疲労」の違いを察知。登板回避に見るセンサーの優秀さ

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Taguchi Yukihito

【短期連載】令和の投手育成論 第14回

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負荷をかけるタイミング

 独特の施術や指導法がYouTubeやSNSで評判を呼ぶ『DIMENSIONING』の北川雄介トレーナーの下には、30人ほどのプロ野球選手に加えてドラフト候補のアマチュア選手も通っている。そのなかで、今秋に向けて注目を集めるひとりが立教大学の右腕・荘司康誠だ。

 北川が大学2年秋に見始めた当初、荘司は右肩に痛みを抱えていた。故障が癒えたあとは順調に成長し、4年生で迎えた今春の六大学リーグでは最速153キロをマークしている。

 188センチ、88キロの大器をスケールアップさせるうえで、北川が念頭に置いてきたのが、どのタイミングで負荷をかけていくかだった。

「去年まではそんなに髭も生えていなかったけど、今年くらいから濃くなってきました。体の骨や関節がある程度強くなってきたら、伸びる時にウエイトや投球の負荷を少しずつかけていかないとダメなのではと思っています。

 逆にそう思ったのは、ずっと(故障しないように)大事にしてきて、じゃあいつ負荷をかけるのか、と。大事にしてきたわりに、負荷をかけていった時にいまいち伸びてこない選手もいました」

 故障を避けるのは大前提だが、投手として能力を高めるには一定の負荷をかけていくことが不可欠になる。ピッチャーの立場からそう同意するのは、2007年からロッテのセットアッパーとして活躍した荻野忠寛だ。

「適正な負荷をかけることで体は強くなっていきます。それは肉体も精神も同じですが、適正が過度になると肉体も精神も壊れてしまいますよね。逆に負荷が足りなすぎると、なかなか成長につながらない。わかりやすく言ったら、負荷が足りなすぎても筋肉は大きくなりません。一方で負荷をかけ続けても肉体は壊れてしまうので、しっかり負荷をかけて休ませることが筋肉の成長には重要です」

 大谷翔平(エンゼルス)の高校時代や、佐々木朗希(ロッテ)のプロ1年目の育成法もあって広く知れ渡るようになった考え方がある。成長期にある選手の場合、骨端線が閉じて身体的な発育が止まるまでは無理をさせず、身長を伸ばすことが将来を見据えた場合に大切になるということだ。

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