絶望、軍隊、地獄...日本一厳しいと評される亜細亜大野球部が挑む「合理的な根性論」の実体 (4ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Sportiva

 球数は<キャッチボール、遠投、ピッチング(ブルペン)、バッティングピッチャー、試合形式>の5種類に分けて毎日管理し、棒グラフで月別の数字を出す。上記に<ノースロー>を加え、毎朝、各選手が捕手コーチと話し合ってメニューを決めていく。

「肩やヒジが壊れないようにそうしています。とくに肩は故障したら(回復まで)1年くらいかかるので、そんな不幸なことはさせたくない」

データと感覚の相関性

 亜細亜大学と言えば、イメージされるひとつが"投げ込み"だろう。実際、多い時期には1日300球を投げることもあるという。ただし、キャッチボールを含めてだ。生田監督が投手たちに先発、中継ぎ、抑えの希望を聞き、具体的に必要な球数が割り出されていく。

 先発完投を目指すなら、試合前にはキャッチボールからブルペンで35球、プレーボール後は1回に15球×9イニング、イニング間の投球練習を5球×9イニング、さらにベンチ前でのキャッチボールを10球×9イニングなどという具合だ。調子の良し悪しで球数は変わるため、両方を想定しておく。本番を踏まえ、ブルペンで「今日は240球投げよう」という日でも、様子を見ながら生田監督が「180球に落とそうか」と助言していく。

 ここに昨年から加わったのがパルススローだ。ワークロードという「強度×量=負荷量」の概念を前回の連載で紹介したが、理想より投球負荷が少ない投手には、大出が「もう少し投げるといい状態になります」と指摘する。

「個々でラインが決まっているので、そこを維持するように目指していきます。難しいのは運用面で、練習のテンポ的に装着できなかったり、『充電を忘れました』という選手もいたりします。充電ステーションなど忘れない仕組みをつくり、『パルスをつけたら得をする』という気持ちになってほしいと思っています」

 亜細亜ではひとりにつき年間約2万円の「パルスダッシュ」というサブスクリプションに加入し、チーム全体の投手マネジメントに生かしている。パルスを積極的に活用しようという意識は上級生ほど高く、昨年阪神にドラフト5位指名された岡留英貴はほぼ装着していたという。こうした統率力は亜細亜の強みで、自分がよくなるなら試してみようとするのは一流の心構えと言えるかもしれない。

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