八重樫幸雄は野球少年に伝えたい「オープンスタンスはマネちゃだめ」 (4ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

――どうして真似をしてはいけないんですか?

八重樫 あのフォームを自分のものにするのに2年もかかったし、そこに行くまでには多くの時間と練習を費やしたわけだから。あっ、そうだ! ぜひ、書いておいてほしいことがあるんだけど......。

――何ですか?

八重樫 よく、「八重樫があそこまで極端なオープンスタンスにしたのは太ったからだ」って言われるんだけど、そういう理由じゃないってこと。素人の指導者が、太っている選手に対して「お前は太っているから、少し開いて打ってみろ」って言っているのを聞いたことがあるけど、「何を言ってんだか」って思ったね。あのフォームを身につけるためにどれだけ時間がかかったと思っているんだよ。

――いつも温厚な八重樫さんが、そこまで強い口調で言うのは初めて聞きました。本当に腹に据えかねているんですね(笑)。

八重樫 目が悪くなったけど、コンタクトレンズが合わないから、メガネをかけてプレーするようになった。でも、メガネのフレームからボールが外れたときにすごく見づらいから、少しずつ微調整をして、ようやくあのフォームになったわけだから。前回も言ったけど、プロに入って一本足打法の練習を命じられて、「やっぱり、一本足は僕には合わない」となった後に、本来の調子を取り戻すのにかなり時間がかかって。その後、あのオープンスタンスにたどり着くまでに、さらに時間がかかったんだからね。

――前回も話題に出ましたが、王さんの師匠である荒川博氏による一本足打法指導は、八重樫さんにとって、一見すると無駄な遠回りのように見えるけど、後に指導者となったときに生きてくるんですよね。

八重樫 そうだね。でも、遠回りだったのは間違いないけど(笑)。

(第5回につづく)

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