ロッテ快進撃を支える、スカウトたちの「眼力」 (2ページ目)

  • 阿部珠樹●文 text by Abe Tamaki
  • photo by Nikkan sports

 そのことが闘志に火をつけ、西岡剛、久保康友などの入団をまとめ上げた。風向きが変わってきたのは2005年の日本一からだった。

「日本シリーズに勝ったということで、選手や監督さんの見る目が変わってきました。あの優勝が転機でしたね。やはりプロは勝たなければダメって痛感しました」

 相手の好反応も手伝い、徐々にドラフト戦略も整ってきた。それまでは、とにかく入団してくれそうな選手を指名するのが第一で、細かい戦略を立てるのは難しかったのだ。

「いま下位の選手が活躍しているので、誰も狙わない選手ばかりに目をつけていると思われがちですが、年によっては競合覚悟でビッグネームを取りに行くこともありますよ。そのあたりは、あくまでもその年ごとで変わります」

 確かに、一昨年は3球団競合の中で大学ナンバーワン左腕の藤岡貴裕を引き当てた。

 しかし、やはり驚くのは西野、岡田といったほとんど注目されていない選手を育成ドラフトで獲得して、一軍選手に育て上げた目の確かさだ。

「西野も岡田もマリンスタジアムでテストしてから指名しました。もちろん、それまでも見ていましたが、指名前の最終確認みたいな感じですね。西野は、球速はそれほどでもありませんでしたが、フォークボールなどの変化球がよかった。それに県立の進学校(富山・新湊高)で成績も上位。頭のいい子なんです。育成というのはコーチがすべて手取り足取り教えるというわけには行かない。練習や投球の組み立ても自分なりに工夫する必要がある。この選手なら自分で考えてそれができるという見通しで指名したんです。そして岡田はなんといっても足ですね」

 下位や育成で指名する際、マリーンズが重視するのは総合的なセンスよりも飛び抜けた能力、ひとつのセールスポイントだという。

「アマチュアの時はセンスだけで、何でもできてしまう子がいます。そういう子はプロに入ると、案外、伸び悩むこともある。何かひとつだけすごい素質を持っている選手は、出てくるまでに時間はかかりますが、精神的にも肉体的にもへこたれない強さがあります」

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