大谷翔平の対戦投手を徹底分析 三十路先発陣のカージナルス、因縁のジャイアンツ、今永昇太らカブス先発陣とは初対決 (3ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki
  • アフロ●写真 photo by USA TODAY Sports/Reuters/AFLO

【強力先発陣擁する因縁の相手・ジャイアンツ】

シンカーが武器のウェッブは厄介な対戦相手だシンカーが武器のウェッブは厄介な対戦相手だこの記事に関連する写真を見る

 4月1日から3日は、ドジャースの宿敵で世界一8度のサンフランシスコ・ジャイアンツと3連戦を戦う(ドジャースは世界一7度)。ジャイアンツはオフに大谷翔平も山本由伸も獲得に動き、ファイナリストに残ったが、結局はふたりにふられた。しかしその後、「プランB」で補強を続け、なんと総額4億ドル(約600億円)の巨額投資をした。行き当たりばったりではあるけれど、これだけ費やしたからには即、結果を出すことを求められる。地区優勝争いではドジャースに食い下がり、悪くてもワイルドカード枠でポストシーズンに勝ち進まねばならない。

 ドジャースとのシリーズ第1戦に出てくるのはローテーション4番手のジョーダン・ヒックス(27歳)だ。103マイル(165km)のシンカーが武器のリリーバーだったが、先発投手に転向することを希望し、ジャイアンツが4年総額4400万ドル(約66億円)でチャンスを与えた。球種はシンカーとスイーパーに加えて、昨季全投球の1.6%しか投げなかったスプリッターを練習中だ。果たしてコンバートはうまくいくのか?

 課題はコントロールと長いイニングを投げるスタミナだが、オープン戦は4試合12イニングを投げ18奪三振7与四球、WHIP(投球回あたりの与四球・被安打数合計)は1.42で良くはない。三振が多いのは素晴らしいが、四球も多い。「今は90%の力で投げるようにしている」と言うヒックス。大谷とはカージナルスにいた昨季1度だけ対戦しており、外角高めの100マイル(160km)のシンカーで二ゴロに討ち取っている。

 第2戦は5番手のキートン・ウィン(26歳)。昨季6月にメジャーデビュー、9試合に登板し5試合に先発、防御率4.68だった。半分以上がスプリッターという珍しい投手だ。大谷とはまだ対戦したことがない。

 第3戦はエースのローガン・ウェブ(27歳)。2023年はリーグ最多の216イニングを投げ、11勝13敗、防御率3.25で、サイ・ヤング賞投票で2位になった。9回あたりの四球数は1.3個とリーグで最も少なかった。ゴロを打たせる投手で、全投球の41%を占めるチェンジアップはメジャーの平均より6.3インチ(16cm)も大きく落ち、平均の打球角度はマイナス5度である。33%のシンカーも平均より6インチ(15.2cm)余分に沈み、被打球角度はプラス1度。ゆえにホームラン王の大谷でさえウェブから飛球は打てない。

 昨季は大谷と8月7日に対戦。第1打席は外角のチェンジアップを打ち、ゴロで抜けて行く中前打、2打席目はチェンジアップを一ゴロ、3打席目は89マイル(142km)の外角低めのチェンジアップを手を伸ばしてとらえ、痛烈なゴロがセンター右へ。快足を飛ばして二塁打にした。

 ウェブは2014年のドラフト4巡。元はフォーシームが武器の投手だったが、2019年に腕を下げてシンカーが武器の投手になった。テンポよく打たせていくから長いイニングを投げられる。昨季も20試合で6イニング以上を投げた。

 このウェブと対照的なのが左腕のブレイク・スネル(31歳)だ。2023年のナ・リーグ、サイ・ヤング賞投手でオフに大型契約を目指したがかなわず、3月下旬に2年契約で妥協した。98マイル(157km)のフォーシームと縦に割れるカーブが主な武器で、バットに当てさせない投球スタイル。MLB公式サイトでは、カーブの空振り時のバットの芯とボールの隔たりは平均10.4インチ(26.4cm)で、メジャーで最も大きいと紹介している。昨季の234奪三振のうち109個がカーブだった。一方で四球も多く、99与四球はリーグワースト。1959年のアーリー・ウィン以来という四球王でサイ・ヤング賞に輝いている。

 スネルと大谷の過去の対戦も8打席で半分が四球、4打数2安打4四球だ。去年は7月3日に対戦。第1打席は1ボール2ストライクと追い込みながら四球、2打席目は97マイル(155km)の外角直球で遊ゴロ、3打席目はストレートの四球だった。この試合でスネルは大谷を歩かせたが、5回無失点でマウンドを降り、勝ち投手になっている。

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