「これがプロで活躍する選手だ」学生時代の吉田正尚の技術に驚愕 社会人野球のレジェンドが引退「まさかここまで長く野球をやれるとは」 (5ページ目)

  • 藤井利香●取材・文 text by Fujii Rika

【最後は一番自分らしい打席】

ーー2023年11月に行なわれた日本選手権準々決勝、対Honda熊本での9回の打席が現役生活最後のひと振りとなりました。

 9回先頭打者で、「強いチームは9回必ず先頭を出す」という大久保監督の言葉を思い出しながら打席に立ちました。カウント3ボール2ストライクから打った打球はセンターにあわや抜けるかという当たり。

 この時、抜けると思えば一塁へオーバーランして走るじゃないですか。でもなぜか「捕られるからまっすぐ走れ!」みたいな声が、打席に入る前に下りてきたんです。そうしたら本当にショートがダイビングキャッチして、僕はそのまま一塁へヘッドスライディング、間一髪セーフ! もう、こぶしを握り締めてガッツポーズです(笑)。

 不思議な感覚でヒットを打ち、また最後の打席が豪快なホームランではなく泥臭い、一番自分らしい打席だったような気がして幸せなラストプレーだったなと思っています。

ーー今後については?

 社業専念で、大手町の本社にスーツで通う日々になります。仕事も自分がそこに対して本気で打ち込めば、喜びや緊張感など野球同様に味わえるのではないかと思っています。すべては自分次第なのかな、と。そしていつの日か、またユニフォームをと言っていただけたら、ENEOSの野球に貢献すべく一生懸命やりたいですね。

山﨑は「幸せな野球人生だった」と振り返った 撮影/浅田哲生山﨑は「幸せな野球人生だった」と振り返った 撮影/浅田哲生撮影/浅田哲生撮影/浅田哲生

後編<慶應のエンジョイベースボールは「言葉が独り歩きしている」 甲子園ベスト8の名主将は野球教室でどう説明しているのか>を読む


【プロフィール】
山﨑 錬 やまさき・れん 
1990年、東京都生まれ。右投左打。大阪ドラゴンズで少年野球を始め、世田谷ボーイズを経て、慶應高へ。2年時よりレギュラーとなり、3年の2008年、二塁手として春・夏連続で甲子園出場。センバツは初戦敗退も、5打数4安打。夏は16打数7安打でチームはベスト8入り。慶應大時代は4年間で春の優勝2回を経験。ENEOS入社1年目と10年目に都市対抗野球で優勝。2022年はベストナインに選出される。高校、大学、社会人で主将を務めた。

プロフィール

  • 藤井利香

    藤井利香 (ふじい・りか)

    フリーライター。東京都出身。ラグビー専門誌の編集部を経て、独立。高校野球、プロ野球、バレーボールなどスポーツ関連の取材をする一方で、芸能人から一般人までさまざまな分野で生きる人々を多数取材。著書に指導者にスポットを当てた『監督と甲子園』シリーズ、『幻のバイブル』『小山台野球班の記録』(いずれも日刊スポーツ出版社)など。帝京高野球部名誉監督の前田三夫氏の著書『鬼軍曹の歩いた道』(ごま書房新書)では、編集・構成を担当している。

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