「どうせオレは使われねえんだろ」選手たちの目が死んでいた青学大野球部を再建 安藤寧則監督は5年でどうやって日本一へ導いたのか (5ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sportiva

── その2021年の春は、1部に上がって早々、「青学は強い」「選手も揃っているし1部昇格即優勝もあるんじゃないか」とも言われていました。

安藤 傍から見ればそういうふうに見えたのかもしれませんが、実際に1部へ上がってみて最初の年(2021年)、春は5位、秋はまたも1勝が届かず2位。去年(2022年)の春も優勝できそうな勢いでスタートしながら、最後はよもやの最下位争い(東都リーグ史上初となる中大、日大、青学大の三つ巴による最下位決定プレーオフ)をするハメとなりました。

 でも、思えばあの経験が大きかったのかもしれませんね。それまでは「この一球だぞ」「このワンプレーが大事なんだ」と言っても、その大切さが練習から滲み出てくるようなことはありませんでした。でも、あのプレーオフで1球の重みはイヤというほど感じさせられたはずで、勝ちきるために精度を高めることがどれほどの意味を持つのかということを選手たちは思い知らされました。滑り込むにしても駆け抜けるにしても、必死さがどれほど滲み出ているのか。そこに気づいた選手が何人もいてくれたおかげで、その後、練習の質は明らかに一段、上がったと思います。

── そうして迎えた去年の秋、またも勝てば優勝という駒澤大戦で9回表まで2−1とリードしながら、その裏、エラーとワイルドピッチが絡んで逆転サヨナラ負け......結局、優勝を逃して3位に甘んじてしまいました。

安藤 さすがにあの時は、野球の神様にまだウチは勝っちゃいけないチームなんだと言われているような気がしました。あと1勝、あと1点、あと1イニング、あと1アウト......まだダメなのか、これでも勝てないのか、ということを考えさせられましたね。それほどの悔しさを踏まえての今年の春でしたから、やっぱりウチは"カメさん"なんです。

 だって、僕のなかには、「まだまだ」という気持ちがずっとありましたし、何が足りないのかは明確に見えていましたからね。「そりゃ、そうだよな、これで勝っちゃいけないよな」と自分自身に言い聞かせて、本当に一歩一歩、一個一個、一年一年の経験を積み重ねてきたんです。だからこそ、やっと野球の神様の許しを得たのかもしれません。

5 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る