ドラフト戦線を異次元の強肩で賑わす上武大・進藤勇也 未来の「侍ジャパン」正捕手となりえる逸材 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 進藤の進言を受けて、谷口監督は続投を決断。最後は紫藤のストレートで押し、ピンチを切り抜けた。ともにリーグ戦全勝を守る白鴎大と優勝を争う上武大にとって、苦しみ抜いて手に入れた1勝だった。

【侍ジャパンは目指すべき場所】

 試合後、あらためて公式戦の舞台に立てた実感を尋ねると、進藤はしみじみとこう答えた。

「いやぁ、楽しいですね。この緊張感のなか、こういうしびれた試合ができるのは醍醐味だと思いますし、プレッシャーがかかるなかでも自分の力を発揮しないといけないので。久しぶりにこういう試合ができて、楽しかったです」

 あまりに気が早すぎる話ではあるが、進藤に聞かずにはいられなかった。春先に開催されたWBCに関して、どんな感想を持ったのかと。もはや別次元の戦いに感じたのか、それでも3年後の自分がその場に立つイメージが湧いたのか。本人がどう感じているのか、知りたかった。

 進藤は苦笑を浮かべながら「レベルが違いますよね......」とつぶやいたあと、こう続けた。

「でも、目指す場所ではあると思います。高い目標を持ってやっていきたいので、いずれ段階を踏んでやっていきたいです」

 自分の置かれた状況を客観的に受け止めつつ、高い志を掲げる。捕手らしいクレバーさを感じさせる受け答えだった。まずは目の前の大学野球で、少しずつレベルアップしていくしかない。そして、その先にさらなる高みへと続く扉が待っている。

 いずれ近い将来、多くの日本人が進藤のことを「しんとう」と読めるようになったその時、侍ジャパンの扇の要には安心感のあふれる捕手が座っているに違いない。

プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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