ドラフト戦線を異次元の強肩で賑わす上武大・進藤勇也 未来の「侍ジャパン」正捕手となりえる逸材 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

【指揮官からの絶大な信頼】

 そんな進藤が、この春に公式戦のキャッチャーズボッグスから姿を消した。3月中旬に右手首を痛め、2カ月近くも実戦を離れたのだ。

「原因はわからなくて。ヘッドスライディングで手をついたわけでも、バッティングで痛めたわけでもないんですけど、試合(オープン戦)が終わってから痛みが出てきて。投げるのも打つのも痛みが出ていました」

 病院で検査したものの、骨に異常はなかった。それでも、一時はボールを持たずに腕を振ることも、バットを持って素振りをすることもできなかったという。再びプレーができるようになったのは、5月に入ってからだった。

 リーグ戦に復帰したのは5月13日、平成国際大との一戦である。平成国際大は最速155キロをマークする剛腕・冨士隼斗を擁することもあって、試合会場の上武大学野球場には多くのプロ球団スカウトが集結した。

 結果的に冨士は登板しなかったものの、進藤の無事を確認できただけでもスカウト陣にとっては収穫だったことだろう。試合中、上武大のベンチ外部員がこうつぶやいていたのが印象的だった。

「進藤さんがキャッチャーだと、サインがすぐに決まってテンポがいいよな」

 上武大は終盤まで平成国際大にリードを許したものの、終盤に逆転。2対1で勝利を収める。進藤は平成国際大・木村樹生からフォーク攻めにあってタイミングが合わなかったものの、最終打席で決勝の犠牲フライを放って面目を保った。

 最終回には捕手・進藤の安心感を象徴するような場面があった。一死満塁と逆転のピンチを迎えた場面、上武大の谷口英規監督がマウンドに向かった。球審から投手交代かと確認されると、谷口監督は「ちょっと待って」とでも言いたげに手で制して進藤に話しかけた。進藤は投手の紫藤大輝を交代させるべきか、谷口監督から相談を受けたと明かす。

「紫藤は満塁になる前からギアが上がっていて、真っすぐも手元できていたので大丈夫だと思いました。紫藤には最上級生としての自覚もありますし、紫藤を信じていくしかないなと。普段、ブルペンで受けてコミュニケーションをとるなかで、『紫藤ならいける』と思っていました」

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